2023/06/11
大きく切っても同じこと?
ふじみ野市の大井みどり動物病院です。
犬や猫の乳腺にしこりがみつかることがよくあります。
例えば、犬の乳腺に、一円玉くらいの大きさのしこりが、ひとつ見つかったとします。
よくあるケースとしては、まず、しこりのみを切除して、それが、乳腺腫瘍かどうか、良性か悪性かを調べます。
調べた結果、乳腺腫瘍であり、良性であれば、それで治療は終了です。
悪性の場合は、転移が検出されなければ、あったところのしこりを中心として、大きく乳腺を切除するのが一般的です。
でも、大きく切ることが、本当にその犬猫のためになるのか、はっきりわかっていません。
過去の乳腺腫瘍の手術の研究報告をまとめた報告では、大きめに切除しても、小さめに切除しても、あまり変わりがないようです。
獣医学では、常識的に、しこりを余裕をもって、大きく余裕をもって取るほど、よいことと考えられていますが、もしかしたら、無意味かもしれません。
大きく切除するほど、後遺症が生じる可能性が高くなるのは確実です。
特に、命が長くなることを期待して、腫瘍を切り取りますが、その効果があるのか、よくわかっていないのです。
大きな手術をする時、特にしこりの手術をする時は、担当医とよく相談することが必要です。
当院では、その研究報告から、乳腺は大きく切除しない方針です。積極的に大きく切除する根拠となるデータがないからです。獣医師の中では、この考えは、かなり異端です。
手術自体をしない、というのも選択肢のひとつになるとも考えています。
大きく切除することが有効であるというデータや根拠があるのなら、ぜひ教えてほしいです。
あるいは、手術によって、命が伸びる可能性がある、というデータがあれば、本当に知りたいと思っています。多分ありません。
当院では、「長生きできる医療」が、3大治療方針の一つです。長生きできない可能性が高く、副作用が確実な医療はしません。特にがん治療においては、そのことをよく考える必要があります。
乳腺のしこりについては、当院にご相談ください。
Hörnfeldt MB, Mortensen JK. Surgical dose and the clinical outcome in the treatment of mammary gland tumours in female dogs: a literature review. Acta Vet Scand. 2023 Mar 11;65(1):12. doi: 10.1186/s13028-023-00674-1. PMID: 36906609; PMCID: PMC10008593.
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