2023/06/17
乳腺腫瘍の相談
ふじみ野市の大井みどり動物病院です。
先日、「乳腺腫瘍があるが、かかりつけ医で、手術不能と言われた。どうすればいいか」といった内容の、高齢犬のセカンドオピニオンのための診療がありました。
小型犬ですが、3センチを超える硬いしこりがあり、乳腺腫瘍で間違いないと考えました。
よく体を観察すると、太ももに、小豆大のしこりが複数ありました。
良性ではなく、悪性の乳腺腫瘍で、皮膚転移をしている可能性が一番高いと判断しました。
これが、本当に乳腺腫瘍(悪性か良性か)か、皮膚転移があるかどうかは、それぞれを切除し、検査することが必要です。
一般的には乳腺腫瘍の治療は手術で取り除くことと、術後に抗がん剤投与を行うことが多いです。共に様々なリスクや重大な合併症の可能性があります。
ご家族は、少しでも長く一緒にいたい希望から、どんな治療をしたほうがいいのか悩みます。大事なことは、副作用のリスクを差し引いても、治療により、「長生きできるようになるかどうか」が、大切なポイントです。
私は獣医師として次の事をお話しました。
1.身体検査だけでは確定はできないが、悪性の乳腺がんであろう。転移をしている可能性が高い。
2.転移を起こしている場合、原則手術は適応ではない。
3.一般的に乳腺腫瘍を切除しても、延命効果があるかはよくわかっていない。抗がん剤なども同様である。最近の報告から、手術に関しては、延命効果は見いだせない。
4.手術したら、かえって、がんの進行を早めることはありうる。
5.一般的にがん治療にはリスクがある。治療死の覚悟は必要である。(一般的にがんの治療はその効果と比例して健常な細胞も障害を受けるので難しい)
6.当院の方針であるが、医療では「延命効果」と「生活の質」が大切であるが、今の生活の質はまったく問題ないようだ。手術や抗がん治療は生活の質を下げる方向にしか働かない。
7. 今後、しこりがザクロのように割れて、悪臭がしてくることもあるので、そのときには切除する合理性はあるかもしれない。(生活の質の改善のための治療)
8.まずは、乳腺腫瘍ではない可能性もあるので、負担の少ない範囲で、精密検査をしてみることがよい。そこで、新たな問題点の検出、がんが全身を蝕んでいる事実がわかるかもしれないが、治療方針が決めやすくなる。
これらを30分ほどかけてご説明しました。少々理解し難い内容にもかかわらず、非常にご納得されているように、お見受けしました。この方は、検査をせず、経過観察となりました。
しこりがあると、切除することが、よいと直感的に思ってしまいますが、そうではありません。その治療のゴールや、期待できる効果、命が伸びる可能性があるのか、治療死の可能性がどうなのか、検討することが大切です。
「犬猫の乳腺がんを切除したらは、長生きできますか?」に正しい根拠をもって「ある」といえる獣医師は、世界中にいないと思います。
腫瘍外科は「しこりがあるから、切り取ればいい」というほど単純な話ではありません。
わかりませんが、犬猫の医療では、その傾向があり、特に延命効果については考慮することがないように感じています。議論が必要だと思います。
しこりの治療に関しても、ご相談ください。
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