2023/07/12
がんで命を落とす訳
ふじみ野市の大井みどり動物病院です。
がんは進行すると、命を脅かすことがあります。犬猫でもよくある死因のひとつです。
普通、がんがそこにとどまっているだけでは、体にはあまり影響しません。
がんで命を落とす原因の多くは「転移」によるものです。
転移とは「原発巣から血流やリンパ流などを介して他の場所に移り、そこに同様な組織変化を起こさせること」です。
転移先の臓器の機能不全により、亡くなることが一般的です。例えば、肺なら呼吸不全、肝臓なら肝不全、腎臓なら腎不全などです。
したがって、がんの治療とは、いかに転移を防ぐかにかかっていると、言えます。
ところで、人では最初のがん細胞が生まれ、数ミリのサイズになって、検査で見つかるまでに、20年位かかるとも言われています。
検査を駆使して、内視鏡などで、数ミリで見つかったら、早期発見と言われますが、すでに、がんは満20歳かもしれません。
20歳が早期とは言いにくいでしょう。
20年あれば、転移する性質のものであれば、転移している可能性が高いでしょう。
しかも、人では乳がんの転移は、「最初のがん細胞が生まれる前後に、生じている」という証拠があります。私は、これは大発見だと考えますが、獣医学の教科書には記載はありませんし、犬猫のがんの専門医の間でも、ほとんど知られていないようです。
がんの種類によって、転移の時期はそれぞれ、違う可能性や、例外もあるでしょうが、人の乳がんのように、転移が最初のがん細胞がうまれた前後で起きているなら、がんの転移を未然に防ぐことは、不可能です。
それを裏付けるように、犬猫において、乳腺外科も含め、腫瘍外科が、延命に繋がっていることを証明する質の良い研究報告はおそらく、ありません。
検査技術を駆使して、5ミリの時に見つかってそれを切除しても、転移の予防には、間に合わないかもしれません。逆に、5ミリの時、転移がなければ、その後転移はしないかもしれません。
残念なことですが、現在の医療で、転移を未然に防ぐことは、難しいでしょう。転移を防げないから、手術で延命効をが見いだせないのでしょう。がん治療が難しい理由のひとつでしょう。
このため、当院では、乳腺を大きく切除する手術、例えば、胸から足の付根まで、あるいは脇の下まで、大きく切除するような手術は、有効性が見いだせないので、行いません。大きな手術ほど、後遺症のリスクがあり、生活の質の低下や、短命になる可能性も十分あるからです。色々考えましたが、今はこの結論です。(腫瘍外科が転移を防ぎ、延命につながるという証明があれば、ぜひ教えてください)
犬猫の腫瘍外科では、「しこりは大きく取ればいい」という風潮がありますが、議論が必要です。
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