2023/08/02
くちびるのしこり
ふじみ野市の大井みどり動物病院です。
先日、セカンドオピニオンで、高齢のわんこが、唇にできたしこりの相談のため、当院を受診しました。
2センチほどのしこりが、左の上唇にあります。見るからに悪性腫瘍が疑われます。腫瘍は一部つぶれており、ときおり出血してしまいます。
前医では、いろいろ検査が必要で、専門家による手術が必要と判断されていました。
私は、このしこり自体を切除しても、進行を抑え、長生きする確率はほとんどないので、手術にあまり意味がないと判断しました。ただし、手術をして、組織検査で他の疾患の有無が判断ができることや、良性腫瘍とわかれば一安心できるかもしれませんし、限られた期間かもしれませんが、出血がなくなるので、その分、生活しやすくなるメリットはあります。
一方、手術することによる副作用のリスクがあります。腫瘍を進行させたり、手術後すぐ再発して、さらに大きいしこりが同様にできる可能性もあります。また、転移が存在していた場合、その転移が手術することで、急に進行する可能性も否定できません。出血が止まらないリスクもあります。
食事を十分とれているし、元気もあるので、生活の質は悪くありませんので、総合的に考えれば、無難なのは、手術はせず、このまま様子をみることですが、手術の判断をする前に、負担のすくない一般的な検査をすることがよいです。
この方は、出血をなくしてあげたいことを、第一に考えて、手術を希望されましたが、コスト制限があり、検査はなにもせず、腫瘍の切除だけを希望されました。普通は諸検査なしに、腫瘍外科をすることはありません。
ご家族の特殊な背景を第一に考え、色々リスクはありますが、検査なしで、当院で請け負うことになりました。
いざ手術をしてみると、隣接して、もう一つ、1センチほどのしこりがあり、予定より、大きく切除することになりました。なんとか切除できましたが、本来なら、事前に軽い麻酔をかけて、口の中をチェックします。端折ると、こういったことが起きてしまうのです。
予想外に、左側の上くちびるを三分の一くらいの切除になりましたが、あっけなく無事終わりました。
必要な検査を省略することで、リスクが増えることもあるし、医療倫理的にも問題が生じることもあるかもしれません。結果的にこちらに過失が生じることもあります。単純にNoといえばよいのですが、現場ではなかなかそうはいきません。
原則から外れることをしたり、例外的な対応をすることは、医療では普通しません。また、功を奏す例外的な対応をするためには、原則を熟知していないとできません。多くの経験が必要です。
医療的にベストなことと臨床的にベストなことは同一ではありません。腫瘍外科では、術前の検査は必須です。今回の様な対応に異論もあるかもしれませんが、ご家族的には十分満足されており、臨床ではそれが一番大切なことです。
非常識なことにはNoとはっきりいいますが、当院では、なるべくご家族の期待や満足を第一に考え、様々なケースに応えられるように尽力しています。
世の中に普遍的に正しい事はほとんどないと考えています。ご家族が考える正しさが、正しいことだと考え、正しさの押し売りはしないように、診療にあたっています。
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