2023/08/07
頭に空白を
先入観は禁物
ふじみ野市の大井みどり動物病院です。
猫の口内炎は珍しくありません。
口の中が痛くて食べづらくなってしまい、よだれがでることがよくあります。厳密には組織検査が必要ですが、症状やお話から、診断は難しくありません。
先日お越しになった初診の猫さんは、そのような典型的な症状があり、まず口内炎を疑いました。確かに舌の根っこが赤く腫れています。
ただ、経験的にはこの口内炎をおこすにしては、少々高齢であることが引っかかりました。このように、何か違和感を感じる時は、くまなく検査をするようにしています。
軽い麻酔をかけ、口の中の詳細なチェック、血液検査、レントゲン検査、超音波検査、リンパ節を含めた細胞検査などを行いました。
その結果から、舌の根っこの悪性腫瘍、舌がん、と診断しました。肺には転移を疑う所見があります。
舌がんはかなり珍しく、普通念頭にはありません。口内炎とは違い、その対応や考え方はガラッと変わります。
よくある、口内炎だと判断していたら、医療過誤でした。
今後、その猫さんはしばらくは、今の生活を維持できますが、やがて転移により具合が悪くなるか、しこりが大きくなると食べたくても食べられなくなることが考えられます。
がんがあまり影響せず、天寿を全うできる可能性もありますが、それはわかりません。
今の状況下で、有効な治療は、胃ろうです。脇腹から、胃にチューブをいれると、そこから食事をとれます。いま行うこともできますが、様子をみると、挿管ができなくなり、麻酔がかけられなくなることも考えられます。
ご家族はこのまま様子をみることを選択されました。
診断時には、先入観は禁物です。頭の中にはいつも空白をもち、視点を多くもつことを心がけています。
それは、実生活でも、大切です。
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