2023/08/29
なにかよっぽどのことが起きている
ふじみ野市の大井みどり動物病院です。
上の写真は、血液細胞の写真です。
動物病院では、検査の一環として、血液細胞を顕微鏡で観察します。赤血球、白血球、血小板のその形態や数などを詳しくみます。
赤血球、白血球については、教科書の記載も多く、よく論じられることがありますが、血小板はそうではありません。
動物病院では、血小板は、「数」と、正常な「巨大血小板」それ以外はあまり議論されていないように思います。
赤血球や白血球は、形態などの変化が、豊富でわかりやすいことがありますが、血小板は、相対的に小さく、たいてい小さな粒にみえ、あまり代わり映えがしないのがその要因のひとつかもしれません。
また、血液細胞は、染色をしないと、よく見えないのですが、血小板は、染まりにくい場合もあり、つい観察を怠ってしまうこともあるのかもしれません。
私は、血液を観察する場合、血小板からチェックします。血小板がみえにくい標本はいまいちです。
血小板を、よく観察すると、意外と、変化がダイナミックであり、様々な形に変化していることがわかります。でも、それが具体的に何を意味するかは、たいていわかりません。
これはあるワンコの血液の顕微鏡画像です。尿が赤く、具合が悪いです。
写真の丸い赤いのが、赤血球です。この色や大きさがまばらで特徴的ですので、自分で赤血球を壊してしまう、免疫介在性溶血性貧血が強く疑われます。この疾患はあまり珍しくありません。
小さな血小板が集まって塊になっています。この塊が、見たことがないほどの大きさになっています。血小板を随分みてきましたが、そのなかでも、おそらく、経験史上一番です。
血液サンプルを不適切に扱うとこのように塊になることはよくありますが、それはありません。
では、これが何を意味するか。おそらく、明確な答えはありません。はっきりはわかりませんが、かなり激しい炎症反応があったり、重度な血栓症が発症しているのかもしれません。
見たこともない血小板の塊なので、なにかよっぽどのことが起きている、と思いました。
免疫介在性貧血はよく診断治療することはありますが、この塗抹を見ると、劇症かもしれないと考え、積極的な治療を即日行いました。治療のための、数万円する免疫製剤を、すぐご家族にご提示し、投与しました。
一般的に、重病、あるいは、緊急疾患において、血液細胞の形態や数は、大きく変わることがあります。逆を言えば、形態が急に変化してるなら、ほぼ間違いなく緊急を要する状態です。その変化と度合いが大きいほど、重篤だと考えています。
普段、正常なものをたくさん見てないと、その判断は難しく、また、きれいな標本でないとその判断ができません。
臨床の現場では、緊急性があるか、急性か慢性か、重症か軽症か、を判断するのが、重要です。血液細胞の観察は、その判断の一助になる重要なツールです。
血液の標本を作るのに、ほとんどコストはかかりません。一回30円位でしょうか?
地味な検査です。高額な医療機器もよいですが、こういった検査に魅力を感じます。
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