2023/12/24
クリスマスケーキと膵炎
ふじみ野市の大井みどり動物病院です。
2022年の新しい報告をみても、やはり、脂質の多い食餌で、急性膵炎(AP)が生じやすくなるのかどうかは疑問です。
その根拠となる報告も質がよいとは言えず、この程度の根拠で、脂質の高い食餌を危険因子にしてしまうのは、疑問があります。
摂取する脂質の種類や内蔵脂肪、膵臓内脂肪にも言及がありますがありますが、日頃、人の報告や書物から、それらは、犬のAPと関連があると私は考えています。
肝臓に脂肪がつくと、フォアグラになりますが、膵臓にも同じようなことが起こり、膵臓が太るのです。
肥満は関連してるのは間違いなく、背景にカロリーの摂りすぎがあるのは間違いないでしょう。インスリンは脂肪を溜め込むので、内蔵脂肪や膵臓内脂肪を溜め込むことに一部加担しているでしょう。
原則、タンパク質と脂質は、インスリンを直接分泌させません。直接分泌させるのは、糖質のみですから、糖質を避けるのが理論的にはよいはずです。
食事で関連がありそうなのは、珍しい食べ物、テーブルの残骸、ゴミ箱あさり、のようです。すごくアバウトであまり参考になりませんが、脂質の多い食べ物よりは、可能性が高く、臨床的に参考になる情報です。
ネットでよく、脂肪の多い食餌は膵炎になるから危ないと警告を見ますが、それよりは「珍しいおやつ」「人の食べ物」「拾い食い」の方に気をつけるのが合理的です。これらをあまりネット情報でみることはありません。
ところで、人の糖尿病は、インスリンを分泌させ続けることで、膵臓のβ細胞が疲弊して、発症すると言われています。
体を酷使すれば、筋肉が発達するように。分泌細胞も発達し、細胞数をふやしてくれても良さそうですが、「疲弊」し、細胞が機能しなくなるのは、少々不思議に思っていました。
一般の書籍で、インスリンが分泌できなくなるのが、「脂肪膵」になるから、とありました。つまり膵臓が太るのです。
膵臓も肝臓も、脂肪がたくさん貯まれば、その機能が低下するのでしょう。肝臓は肝不全になりますから、膵臓も膵不全になるのでしょう。局所的なインスリン抵抗性もあるでしょう。
犬で、膵外分泌不全症という病気がありますが、たいてい生まれつきです。脂肪が貯っても、外分泌機能の影響は受けにくく、内分泌不全症になるのかもしれません。
現に、ダイエットにより、糖尿病は治ることがあるので。膵臓から脂肪が抜ければ、膵臓がうまく働く可能性があります。
脂質をたくさん取ると太りやすいですが、インスリンが少ない状態のほうが太りにくいと考えられます。インスリンがたくさんでている状態で脂質を取ると、太りやすく、インスリン抵抗性が生じやすくなります。
おそらく、犬の急性膵炎も、インスリン抵抗性が絡んでいると考えます。
糖質はインスリンを直接分泌させるので、犬の急性膵炎には糖質が要因のひとつでしょうと、報告や成書には記載されていませんが、そう考えています。
さらに、血中の中性脂肪の高値とAPは関連がありますが、中性脂肪を上昇させるのは、人の介入研究から「糖質」といえます。こちらもまだ成書には記載がないと思いますが、可能性が十分にあります。
ようするに、「甘いもので、インスリン抵抗性が生じ、膵臓をも太らせ、中性脂肪値を上昇させ、急性膵炎になりやすくなる可能性がある」という仮説です。
10年後くらいには、その報告に、このことが記載されるようになるかもしれません?
ちなみに、動物病院の膵炎のためのドライフードは、比較的低脂質で作られています。低脂質にすると、相対的に高糖質になります。
クリスマスケーキを食べ続けると、多分膵炎になりやすくなります。
簡単に言えば、「食べる脂」より、「体の脂」が重要です。単純に脂肪が脂肪になるわけではありません。
Cridge H, Lim SY, Algül H, Steiner JM. New insights into the etiology, risk factors, and pathogenesis of pancreatitis in dogs: Potential impacts on clinical practice. J Vet Intern Med. 2022 May;36(3):847-864. doi: 10.1111/jvim.16437. Epub 2022 May 12. PMID: 35546513; PMCID: PMC9151489.
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