ふじみ野市の大井みどり動物病院です。
 
 
「たとえドライフードを主食としていたとしても、前庭症状、精神状態の変化、失明および発作を呈する猫では、TDは鑑別診断とみなされるべきである」(Chang 2017)　と研究報告にあります。(TDとはチアミン欠乏症のことです)
 

意外とチアミン欠乏症が蔓延しているのかもしれません。イカやエビを気にしている場合ではありません。
 

我々獣医師は、神経症状がある場合は、チアミン欠乏症を考える必要があるのです。
 

ですが、おそらく、神経の専門医も含めて、神経の症状がある場合、チアミン欠乏症を獣医師はほとんど考えていないと考えます。
 

人での報告をみると「胃腸症状、気分や睡眠障害、感覚異常、心不全など、他では説明されていないあいまいな徴候や症状を伴う肥満患者やダイエット中の患者において、チアミン欠乏症の診断を検討するのは臨床医の責務であろう」（Kerns 2015）とあります。
 

吐き気、嚥下障害、便秘、腹部の不快感、イライラ、倦怠感、衰弱、睡眠障害、筋肉痙攣、失明、記憶喪失、昏睡など多種多様であり、不調な場合は、チアミン欠乏症を考える必要があるといえます。まれでしょうが、チアミン欠乏が進行すると命の危険性もあります。
 


すべての不調がチアミン欠乏症で起こりうるといってもよいかもしれません。
 



ドライフードで、そのリスクがある以上、チアミン欠乏症を常に獣医師は考える必要があります。
 

「特発性」といって、原因が特定できない場合の病名として、使うことがありますが、もしかしたら、チアミン欠乏症など、栄養失調から生じているかもしれません。
 

ただ、チアミン欠乏症の診断が難しいという側面があり、一般的な血液検査では、わかりません。
 

では、臨床現場で、どうするかというと、不調、とくに入院が必要な場合は、チアミンが含まれるビタミン製剤を積極的に使用していくことが、臨床的であり、合理的な考えだと考えています。
 

糖質の多い食餌は、代謝のときにチアミンが消耗されます。ミネラル成分が削ぎ落とされている白米ばかり食べていたら、チアミン欠乏症になります。現代のペットフードは糖質が多い可能性があり、チアミンが不足しやすいかもしれません。
 

市販のアリナミンなどには、チアミンが含まれていますが、プラセボ効果だけで、効果はあまり期待できないものだと考えていましたが、コンビニでは、よく手にして購入しているのを見かけますので、効果を実感している方が多くいらっしゃるのかもしれません。
 

人のチアミンの含まれる「にんにく注射」も、意味があるとは考えていませんでしたが、現代人には理にかなっており、効果があるのかもしれません。
 

人でも犬や猫でも、チアミンが欠乏症が意外と存在しているかもしれないのにもかかわらず、多くの医師や獣医師はその可能性すら考えていません。検査しても、異常が見つからない、原因不明な不調は、チアミン欠乏症かもしれません。
 

完全栄養食を謳っていても、そのペットフードにはチアミンが不足しているかもしれません。
 

拡大して考えれば、他のビタミンや様々な栄養素不足において、同様なことが起きているかもしれません。
 

いまのところ、犬猫も人も、イカやエビや生魚などに含まれるチアミナーゼによるチアミン欠乏症は考える必要がなく、摂取不足によるチアミン欠乏症に注意が必要であるという結論です。



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