ふじみ野市の大井みどり動物病院です。
 
 
 
動物病院でも、肥満のため、減量指導することがあります。
 


たいてい、今のドライフードの量を減らしたり、減量フードにしたり、おやつや脂肪（脂質）を控えるように指示します。その本質はカロリー制限ですが、もしかしたら、そのようなカロリー制限は、時代遅れになるかもしれません。
 


この研究報告をみると、カロリー制限より、何を食べるか（炭水化物、脂質、タンパク質の割合）が重要なようです。人の実験ですが、一日あたり約５８００キロカロリーで統一した３種類の異なる食事摂取実験があります。
 


簡単にその内容を私は次のように捉えました。
 


１　ケトン食のような食事（炭水化物が少ない、自然な食材）
２　現代人の一般的な食事（炭水化物が多く、加工食品が多い）
３　一般的に健康的と考えられている食事（炭水化物が多め、自然な食材）


 
三週間後の感想と体重変化は次のような感じです。
 


１　満腹感が十分ある、体調はよい、幸福感がある。体重１kg増。
２　満腹感はなく、体調はよくない、幸福感がない。体重７kg増。
３　満腹感が十分ある、体調はよくない、幸福感がない。体重５kg増。
 


３つの食事のうち、１が太りにくく、心身によいようです。
 


何がその差を生じさせているかというと、炭水化物の量であり、特に、血糖値の上昇度や、インスリンの分泌量のようです。
 


この実験は介入実験としては非常に優れていますが、サンプル数が１であるので、質はよくありません。
 


報告に中では触れられていませんが、食品の加工度が高いと、満腹感が乏しい可能性があります。
 


ようするに「炭水化物が少ない自然な食材」が太りにくく、減量効果が得やすく、健康によい可能性があります。
 


犬猫のペットフードは、この３つでいうと、２に入ります。炭水化物が多く、加工度が高いといえ、もしかしたら心身にあまりよい影響を与えていないかもしれません。
 


３つの中で言えば、犬や猫は１のような食事内容が、本来食べてきたものに近いと考えます。人も、一万年前の穀物を食べた出す前は、長い期間１くらいの炭水化物量しか摂取していなかったと考えられます。
 


これからは、犬猫での減量はカロリー制限でなく、「炭水化物と加工食品」制限となるかもしれません。
 


そのような食事は、満腹感を得やすく、太りにくい可能性があります。そして、体調が良くなり、幸福感が増すかもしれません。
 
 


（これと相反する研究報告もありますが、アンケートによるものや事前のウオッシュアウトができていない、炭水化物制限が乏しい、マウスの実験だったり、観察研究であったりと、研究として良質なものはないと考えています。当研究もたった１例ですから、まだまだ、不明な分野です）


 


Feltham S, Westman EC. A case study of overfeeding 3 different diets. Curr Opin Endocrinol Diabetes Obes. 2021 Oct 1;28(5):446-452. doi: 10.1097/MED.0000000000000668. PMID: 34352821.