ふじみ野市
大井みどり動物病院
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2024/03/07

除外診断と感染症とステロイド

除外診断
 
 
 

 

ふじみ野市の大井みどり動物病院です。
 
 
 
除外診断(Exclusion diagnosis)は、症状や検査所見から、可能性のある疾患を絞り込む過程のことで、可能性のある他の病気を除外していくことです。
 


例えば、喉が乾いて異常に水を飲む場合、まず、その症状のでる10個くらいの病気を考えて、検査をし、可能性のない病気をはずしていき、残った病気が、診断名になります。

 


先入観にとらわれず、病気を正しく診断するうえで、「除外診断」は有効なツールです。

 


ところで、成書や研修会で、診断ステップとして「感染症を除外したら」とでてくることがよくあります。

 


いとも簡単に述べられることが多く、実は「感染症の除外」は難しいのですが、議論されることがないと感じています。

 


先日、獣医師の学会、「獣医内科学アカデミー」で、西日本の大学の先生に感染症の除外方法を質問してみましたが、納得のいく答えは得られませんでした。

 


一般的にはPCR検査による除外をする専門家が多いようですが、検査の原理などを考えれば、完全に除外も確定もできず、有効的な局面はかなり限定されますので、例外もありますが、不適切と考えています。

 


例えば、下痢している場合、顕微鏡で寄生虫が検出されれば、簡単に診断ができることがありますが、そのほかの感染性の腸炎の除外は難しいです。(パルボウルス性の腸炎は診断しやすいですが、近年ではほとんどありません)下痢のPCRのセット検査をしても、除外はできません。かえって、PCR検査をすると診断が混乱してまうことも多いです。

 


免疫疾患の炎症性の腸炎は、ステロイドを免疫抑制剤として使用すると劇的によくなることが多いのですが、感染性の腸炎では、原則、ステロイドは使用禁忌で、使ってはいけません。なぜならば、免疫力が下がり、感染が悪化するからです。両者が併発していること場合もあります。

 


状態が悪い腸炎を起こしている犬がいたとして、ステロイドが劇的に効く可能性が高く、早くステロイドを使いたいが、もし感染症だと、ステロイドにより急変する可能性がありますので、やはり、感染症の有無を知ることは重要です。

 


去年は、典型的な全身的な細菌の感染症(敗血症)が去年立て続けにありました。多くの場合、顕微鏡でみると、白血球の形態が変化していることが共通点でした。

 


その変化は白血球の中毒性変化(一般的な中毒でとは関係なく、主に細菌感染のときの白血球の形態変化のことです)でしたが、それがあると重症な細菌感染がある可能性が高いです。感染症がなくとも、中毒性変化が生じることがありますが、敗血症の方が、変化がダイナミックです。

 


また、細菌による感染症や敗血症の場合は、レントゲン検査やエコーで、感染巣が見つかることがよくあり、この所見は非常に有効です。

 


でも、それだけでは不十分であり、年齢や犬種、生活環境、既往歴、各種検査結果、培養検査など、様々な所見から、多角的に判断する必要がやはりあります。

 


感染症の除外は簡単ではなく、経験、知識、技術など、内科的な知識が深くが要求されます。また、特別な検査結果があれば感染症の確定はしやすいですが、完全な除外は無理でしょう。

 


ようするに、容疑者を集め、無実者を証明し、除いてゆく作業が除外診断であり、際立った明らかな証拠があれば、犯人の特定が可能です。「感染症」という犯人は他の容疑者といつも似ていて、特定が難しいですが、白血球の形態変化があるとかなり怪しいといえると考えています。

 


実は感染症だったときにステロイドを使ってしまうと急変のリスクがありますが、ステロイドでよくなる別の病気場合もあり、早急な見極めが大切であり、現場ではその判断に苦慮することがあります。

 


感染症と免疫疾患が、併発している場合もありますし、他の病気が絡んでいる場合もありますので、難しいケースもあります。

 


また、ステロイドを使用することにより、検査結果ががマスクされ、診断が迷宮入りすることもありますので、安易な使用は動物のためになりません。

 


診断前のステロイドにより、容疑者の容疑がいつまでも晴れないということが起こってしまうことがあるのです。

 


重症な場合ほど、初動検査が大切で、くまなく検査し、様々なサンプルをとっておくことが重要です。

 


ステロイドを使うまでの診断により治療の成否が決まります。

 
 


 


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