ふじみ野市の大井みどり動物病院です。
 
 
 
でも、現代において、犬が野生のオオカミとまったく同じものを食べるのが最善だとは考えていません。野生のオオカミは食べたものの衛生面の欠陥や毒性、あるいは飢餓により、命を落とすことがある（あった）でしょう。
 


また、野生のオオカミと同じものを食べることは、無理です。
 


「現在の方が長生きだから、現在の食事がよい」という考えがありますが、人では一般人に比べ、ある原住民の平均寿命は短いですが、無事大人まで成長した原住民は、現代の大人よりも、健康で長生きであるという報告があり、１５歳位までの生活インフラの向上が、寿命の延長と大きく関連している可能性があります。「食事の安全性の向上の他、さまざまな生活インフラがよくなったから、現代人は長生き」とも考えることができます。
 


よって、野生のオオカミの寿命は５から６年かもしれませんが、食事以外の要因を改善すれば、寿命が伸びる可能性は十分にあります。人でいえば、安全である、適切な量の狩猟時代の食事は健康によいかもしれません。少なくとも、非常に参考になるはずです。
 


食事がどのように健康や疾患と関連しているか、摂取した栄養素がどう吸収されていくかは、複雑系であり、全容を理解するまでには、長い年月がかかるでしょう。ですから、至適な食事を考えるにあったては、今まで、犬も猫も人も過去数百万年年食べていた食事内容が、現時点では、もっとも参考になると考えます。
 


簡単に言えば、犬に至適な食事が何かを考える場合、感染性や毒性を排除した、オオカミが昔から食べて来た食事内容が現在では、一番参考になるではないかと考えています。大きな失敗を繰り返し、たかだか数十年で作成されたAAFCOの栄養基準より、この研究報告のような、はるかに長い年月をかけた、適応進化によって、生まれた栄養設計の方が、ずっと最適解に近いと思います。
 


犬は家畜化された野生のオオカミです。人に飼育され始め、雑食動物に進化したと、過去形で、よく聞きますが、視点を変えれば、人工的に飼育されることで、雑食性の食事を余儀なくされいると考えることもできます。
 
 
 
 
Bosch G, Hagen-Plantinga EA, Hendriks WH. Dietary nutrient profiles of wild wolves: insights for optimal dog nutrition? Br J Nutr. 2015 Jan;113 Suppl:S40-54. doi: 10.1017/S0007114514002311. Epub 2014 Nov 21. PMID: 25415597.