ふじみ野市
大井みどり動物病院
水曜休診 
夏季休業なし
10時〜

2024/06/02

CNCD

慢性非感染性疾患
 
 
 

 

ふじみ野市の大井みどり動物病院です。
 
 
 
「慢性非感染性疾患(CNCD)」とは、肥満、糖尿病、がん、アレルギー、うつ病などのことです。文明病とも言われています。昔はあまりなかった病気で、現在CNCDは増加しています。人では全世界の年間死亡者7100万人のうち72%の死因がCNCDです。CNCDはヒトでの用語で、獣医学では出てきません。
 


単純な感染症は犬猫では年々減少しています。野良犬や野良猫の実態はわかりませんが、飼い犬や猫で言えば、生後まもない時のときの呼吸器の感染症や腸内寄生虫、膿皮症やノミダニなど皮膚感染症などは時折ありますが、死因となることはほとんどありません。近年、不治の病とされていた猫伝染性腹膜炎の治療効果は著しいです。

 


時々、免疫低下による日和見感染はありますが、それを感染症としてカウントしないなら、この20年ほど、単純な感染症死は、猫伝染性腹膜炎以外、経験がありません。

 


CNCDが増加しているのは、過去一万年に渡るライフスタイルの変化が要因です。それは、主に、運動不足と不均衡な食事です。

 


不均衡な食事とは、コンビニやファストフード、咀嚼の必要のない食べ物、エネルギー密度の高い食べ物、などです。

 


この論文でも述べられていますが、人間が植物や動物を家畜化し始め、人の食事内容が変化し始めたのが約 12,000 年前です。人が犬の飼うようになったのもその頃ですので、農業が発達し、穀物などの雑食性に富む食事の変化に伴い、イエイヌの食事も肉食から、雑食性を余儀なくされたのでしょう。

 


そして、この数十年で、ペットフードが一般的になりました。手軽に安価にある一定の栄養を提供することに非常に貢献していますが、ペットフードは、犬猫は過去食べてきたものとペットフードは非常に異なり、加工でん粉を使用しているものがほとんどであり、あまり咀嚼は必要なく、エネルギー密度が高く、保存料や添加物の使用もあり、この報告で述べられている、不均衡な食事の特徴が当てはまります。

 


犬猫でも、CNCDが増えている現状と、この論文の考えを鑑みると、犬猫の食事も改良していくことが必要といえるでしょう。

 


犬猫の栄養学では、この論文のような観点から論じているものは私が知る限りありません。人の栄養学者も現代食と病気の関連を歴史から論じるている方もほとんどいないように思います。

 


この論文の著者は、文化人類学者や考古学者のようです。栄養学者は「進化の観点から見なければ、生物学上の何ものも意味をなさない」ということをあまり考えないのか、あるいは、栄養学の範疇を超えるのかもしれません。

 


犬や猫の解剖学や消化生理学を考えると、動物性の食事を消化するよう、合理的に作らているのがわかります。また、犬猫にとっては、植物性より動物性の食事の方が、様々の面で優れています。犬猫は肉食動物ですから、当然です。

 


犬猫は動物性の食事に適応進化していることは明らかです。もしかしたら、加工度の高いペットフードにまだ適応しきれていないかもしれません。

 


でも、現代食やペットフードがCNCDと関連しているか、していないかの質の良い証明は難しいでしょう。なぜならば、長期の介入研究が難しく、アンケートによる分析になってしまうことが多いからです。

 


この数十年で人が作った栄養基準より、何百万年もかけて自然が作った栄養基準(ずっと昔から食べてきたもの)の方が、優れていると考えますが、両者の優れている点を採用し、現代のニーズに合致した、健康によい食事が開発されることを期待しています。

 




Alt KW, Al-Ahmad A, Woelber JP. Nutrition and Health in Human Evolution-Past to Present. Nutrients. 2022 Aug 31;14(17):3594. doi: 10.3390/nu14173594. PMID: 36079850; PMCID: PMC9460423.

 


 


 受付時間

受付時間 日祝
9:50-12:45
15:50-18:45

水曜休診
夏季休業なし
12月30日から1月3日休診

049-265-1212