2024/07/06
安心のための検査
ふじみ野市の大井みどり動物病院です。
「治療に影響しない検査は無駄である」のようなことを、なにかの講習会で学んだ記憶があります。
なるほどと非常に感銘し、私の臨床に大きな影響を及ぼした学びの一つです。
一見必要な検査でも、その後の治療に影響しない検査は、不要だという考えです。検査は手段であり、治療が目的だからです。
例えば特に、便のPCR検査やアレルギー検査はコストの割に、診断の決定打にはなりません。無駄とは言えませんが、コスパはよくありませんし、混乱を招く場合もあり、注意が必要な検査です。実際の治療には影響しないことがほとんどですが、ご希望があれば、行います。
また、様々な事情で、もともと、治療、例えば、手術や入院をするつもりがないなら、あまり検査の意義はありません。
検査は、確定診断のため、と治療オプションを決めるために行うものであり、それらの決定に及ばない検査は、不要であると言えます。
でも、それは主に医療者側の考えです。一方、ご家族が、安心するために、行う検査があります。
例えば、普通、急に下痢を起こして、下痢以外問題がない場合、重病の可能性は低いため臨床的には対症療法で、検査をしても、検便程度で済ませることが一般的です。
安全域で考えれば、さまざまな重病の可能性は否定はできませんので、心配な方には、問題でないであろう検査を行って、安心していただくケースがあります。
他例、高齢のワンコでは、からだによくイボができます。10個くらいある場合もあります。厳密には見た目で判斷できませんが、イボと判斷して経過観察が一般的でしょう。
中には、心配な方がいて、切除を希望される方もいます。元気食欲があって、基礎疾患がなければ、麻酔のリスクはほぼゼロですから、10個切除し、すべて組織検査に提出し、イボだと、確認することもあります。
ご家族によって、同じ現象でも、受け止め方が様々だと感じています。
ご家族に安心してもらうため、一般的にはあまり必要のない、少々過剰と判斷されるような、決して間違ってはいない検査をすることがあります、ということです。
動物病院の仕事は、病気を予防したり治療することにより、生活の質を改善し、長生きをすることに貢献することですが、「ご家族に安心してもらう」ということも大事な責務なのです。
ご家族は、獣医師から「問題ないです」と説明されると、獣医師が想像する以上に、ご家族は、安心されているように見受けられます。
動物病院の最終的な目的は、ご家族が満足することだと考えています。その要素として、適切な診断と治療はもちろんありますが、「ご家族が安心するための検査」というのも意外とあるのです。
我々は、それぞれのご家族の気持を汲み取り、ご家族によって、検査や治療をアレンジしているのです。
はたから見ると、ご家族によって対応を変えていると、みえるかもしれませんが、その通りです。
そのような医療は、「オーダーメイド医療」「患者中心医療」「個別化医療」などと言われています。
そのため、ご家族の感情を理解し、時には非合理性や矛盾を受け入れることがよいこともあります。まあ、AIには、しばらくは無理でしょう。
様々な意思決定に関し、獣医師にはかなりの裁量権があります。獣医師により、その考え方は様々ですし、人より、その割合は大きいと感じています。
大きな裁量権は諸刃の剣です。したがって、動物病院の獣医師は、高い専門性、柔軟性や倫理観を要求されます。
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