ふじみ野市
大井みどり動物病院
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2024/08/31

犬とインスリン

と2型糖尿病など
 
 
 
 

 

 

ふじみ野市の大井みどり動物病院です。

 
 
 
犬には人で一般的である、2型の糖尿病は認められていません。(猫ではあります)

 


犬でそれがない、理由は詳しくはわかっていません。

 


でも、人では2型の糖尿病になる前に、インスリン分泌過剰やインスリン抵抗性が生じますが、この先行する状態は、犬でも共通して、生じるようです。

 


その後、人ではインスリンをつくる膵臓のベータ細胞が疲弊し、インスリンが正常に分泌されなくなることで、2型の糖尿病を発症しますが、犬はインスリン分泌能が落ちることがないのが、2型の糖尿病が発症しないことの要因かもしれません。

 


つまり、犬はインスリン分泌能が人や猫に比べ、強く、ベータ細胞が障害を受けにくいと考えられます。

 


それを裏付けることとして、犬のキシリトール中毒では、インスリンが過剰に分泌され、低血糖になり、急死する可能性がありますが、これは犬のインスリン分泌能が高いからだと言えるかもしれません。

 


また、インスリンは肥満ホルモンとも呼ばれており、インスリンには脂肪を貯める作用があります。

 


インスリン分泌能が高いことを考えると、犬は、太りやすいのかもしれません。確かに、臨床現場では、そう感じることがあります。

 


これしか食べてないのにやせないんです、と聞くことが多いのは、多くのインスリンにより効率よく糖質が脂肪になっている可能性があります。

 


また、脂肪の塊が、体表に出現することがありますが、猫にはほとんどなく、犬に圧倒的に多く、よく診察します。もしかしたら、インスリンが出やすいことと関連があるかもしれません。

 


ようするに、犬は脂肪をためやすい体質があり、その理由はインスリンが豊富に分泌されるからだと考えることができます。

 


犬の祖先やオオカミは、糖質をほとんどとっていなかったので、インスリンは今に比べるとあまり必要はなかったと言えます。時折、木の実や果物を食べることができ、その時にはインスリンの追加分泌はあったのでしょう。

 


自然界では、いつも飢餓との戦いであり、たまにとる糖質は、効率よく、脂肪として、蓄える必要があったので、インスリン分泌能が高くなったのかもしれません。

 


あるいは、人と暮らすようになってから、穀物などの糖質をとるようになって、体が、インスリンを分泌するようになリ、その能力が向上した可能性もあります。一万年程度で、遺伝子に多少変化があったとしても、実際その能力を得るとは考えにくいのですが、否定できません。

 


この研究報告は、普段、犬はインスリン分泌能力高いであろう、という私の考えを強固にしました。

 


そのため、健康犬では血糖値が上昇しにくと考えています。ストレスや麻酔や敗血症などで、高血糖になることが猫に比べると非常に少ないです。逆に、低血糖になるケースは猫より多いです。

 


犬はインスリン分泌能が高いので、高血糖になりにくい動物だと予想しています。

 


犬とインスリンについては不明な点が多いですが、インスリンをたくさん出す状態は、肥満につながります。肥満は万病の素であるし、人では過剰なインスリンが、がんやアルツハイマー病と関連しているようです。

 


犬はインスリンの分泌能が高いことにより、2型の糖尿病になることを防いでいるが、その分、肥満をはじめ他の様々な病気を起こしやすかもしれません。肥満にならないこと、つまりインスリンをなるべく追加分泌させない生活が健康につながると言えるでしょう。

 


一言で言えば、犬はインスリンを分泌する能力が高く強靭で、高血糖になりにくく、2型の糖尿病にはならないが、太りやすく、様々な病気と関連している可能性があると私は考えています。

 


以上、一臨床家の仮説です。

 




参考文献

「慢性代謝性疾患は IR によって誘発される可能性があります」
Zhao, X., An, X., Yang, C., Sun, W., Ji, H., & Lian, F. (2023). The crucial role and mechanism of insulin resistance in metabolic disease. Frontiers in Endocrinology, 14. https://doi.org/10.3389/fendo.2023.1149239.

「結論と臨床的関連性- 肥満犬は、より多くのインスリンを分泌することで、肥満によって引き起こされるインスリン抵抗性を補っています。何年にもわたる肥満によって引き起こされるインスリン抵抗性と代償性高インスリン血症にもかかわらず、第一相インスリン分泌とベータ細胞のグルコース感受性は失われていません。これらの発見は、猫や人間とは異なり、犬が 2 型糖尿病を発症することが記録されていない理由を説明するのに役立ちます」
Verkest KR, Fleeman LM, Rand JS, Morton JM. Evaluation of beta-cell sensitivity to glucose and first-phase insulin secretion in obese dogs. Am J Vet Res. 2011 Mar;72(3):357-66. doi: 10.2460/ajvr.72.3.357. PMID: 21355739.

 


 


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