ふじみ野市
大井みどり動物病院
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2024/09/07

まだまだ未知な肛門嚢

は肉食動物にあります
 
 
 
 

 

 

ふじみ野市の大井みどり動物病院です。

 
 
 
肛門嚢は犬や猫に存在する、肛門の近くにある一対の臭覚生成器官です。

 


詳しいことはわかっていませんが、その分泌物を介して、動物同士はコミュニケーションを取っています。

 


簡単に言えば、肛門嚢腺分泌物(ASGS)は個人情報をやりとりするツールです。

 


相手の犬のおしりを嗅ぐ行為は、犬の富んだ嗅覚により、その成分を感知し、相手のプロファイルを得ています。

 


嗅ぐ行為は、ほんの数秒でしょうか。その時間で、性別、年齢、犬種、発情状態、健康状態、精神状態、性格、相性などを把握しているのでしょう。

 


それは一瞬であり、人が人を理解すること比較すると、とんでもなく早く、効率的かもしれません。

 


動物病院では、その肛門腺を絞って、肛門嚢腺分泌物(ASGS)を出すことを行いますが、その個体により、その性状は様々です。サラサラの液体タイプから、パサパサして乾燥している場合、黒、緑、黄色など多岐にわたる色、ニオイも様々で、バリエーションに富んでいます。

 


また、肛門嚢は皮膚がくぼんた空間で、皮膚の一部と同時に、皮脂腺や汗腺にと類似している点もあり、かなり独特な器官といえます。

 


その独特な肛門嚢は、猫にもあり、肉食動物に備わっているものです。犬が肉食動物だ、というひとつの根拠として、肛門嚢があるのは、ほとん知られていない事実です。

 


皮膚の一部であるから、常在菌が存在していますが、その常在菌も個体によりさまざまなようです。腸内の細菌叢(マイクロバイオーム)の個体間により相違があるのと同様かもしれません。

 


それから、その肛門嚢腺分泌物(ASGS)が出やすいと出にくい個体があります。通常は排便のときに排出されますが、でにくいのは異常です。

 


たとえば、下痢の場合は、排便の時、肛門嚢への便による圧迫力が減少するため出にくくなると言われています。また、アレルギーによる炎症があると、導管がせまくなり、出にくくなるとも言われてます。

 


肛門嚢の病気はめずらしいものではなく、炎症で腫れたり、化膿したり、腫瘍ができる場合などがありますが、だいたいその3パターンです。症状として、一番認められるのは、閉塞して、出にくくなるや、いざる、舐めるなどです。

 


そういえば、腸内の細菌叢(マイクロバイオーム)は健康と病気に大きく関わっていることがわかっています。適切でないと、さまざまな慢性疾患や免疫異常をおこす可能性があります。肛門嚢の中にも常在菌が存在し、腸のそれと同様かもしれません。

 


腸内と同様、肛門のうの中の細菌も、食べ物の影響を受けてる可能性があります。

 


腸内の細菌叢は食べものにより、かなり左右されます。加工された食べ物や肉食動物の犬に植物性の食品を与えると本来あるべき細菌叢から大きくかけはなれてしまう可能性があり、異常発酵する可能性があります。

 


肛門嚢内の菌も同様で、不適切な食事で、異常発酵しているかもしれません。かなりきついニオイの肛門嚢腺分泌物(ASGS)は異常発酵している可能性があります。

 


黄門のうの中の細菌叢が、異常になると、排泄やその中の免疫機能が低下し、炎症や化膿につながるかもしれません。また、免疫低下や慢性炎症は腫瘍に発展する可能性もあります。

 


以上から、肛門嚢の異常の大きな要因のひとつは食べ物かもしれません。肉食動物に備わっている肛門嚢の不調は、肉食により良くなるかもしれません。

 


それから、どれくらいの頻度で絞れば良いか、よく質問をお受けしますが、基本に必要ないと考えています。過去に肛門嚢のトラブルや、症状が出現する場合は、定期的に絞ったり、食事療法をしても良いかもしれませんので、受診して、ご相談下さい。

 


一気にお部屋の中で、出てしまうと、人にとってニオイが強烈ことがあるので、そのような場合は定期的に絞っても良いでしょう。

 


ちなみに、うちの犬は肉食で育てていますが、肛門嚢を絞った経験がありません。貯まったことも一度もありませんし、肛門嚢腺分泌物(ASGS)に特有なニオイを嗅いだこともありません。

 


肉食がフィットしているため、腸内や肛門嚢の細菌叢が適切になり、肛門嚢がうまく機能しているのかもしれません。

 


もしかしたら、正常な肛門嚢腺分泌物(ASGS)は、かなりサラサラした液体で、あまり匂わない可能性があり、本来、犬は絞る必要がないかもしれません。

 




参考文献

「細菌微生物叢は、特定の環境に生息する細菌と定義されます ( 9 )。健康維持に非常に重要で、消化や解毒に関与し、病原体と競合してその定着を防ぎ、免疫系と相互作用します ( 10-13 )。細菌微生物叢と免疫系の相互作用は、適切な自然免疫応答と獲得免疫応答を得るために不可欠です ( 13-15 )。さらに、微生物叢は皮膚表面や消化器、呼吸器、泌尿生殖器の上皮や粘膜の免疫系を刺激し、これらの領域を病原体から保護します ( 16 ) 。したがって、細菌微生物叢の不均衡は特定の疾患の発症と関連付けられています ( 16-18 ) 」
Bergeron CC, Costa MC, de Souza LB, Sauvé F. Description of the bacterial microbiota of anal sacs in healthy dogs. Can J Vet Res. 2021 Jan;85(1):12-17. PMID: 33390648; PMCID: PMC7747662.


「肛門嚢の分泌物は、防御、種の認識、生殖状態などの行動の化学信号として使用され、発酵仮説に寄与する可能性があります」
Yamaguchi, M., Ganz, H., Cho, A., Zaw, T., Jospin, G., McCartney, M., Davis, C., Eisen, J., & Coil, D. (2019). Bacteria isolated from Bengal cat (Felis catus × Prionailurus bengalensis) anal sac secretions produce volatile compounds potentially associated with animal signaling. PLoS ONE, 14. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0216846.


「肛門嚢は肉食動物全体に見られる重要な嗅覚生成器官であり、肛門嚢からの分泌物は防御、種の認識、生殖状態などの行動に使用される可能性があります」
Yamaguchi, M., Ganz, H., Cho, A., Zaw, T., Jospin, G., McCartney, M., Davis, C., Eisen, J., & Coil, D. (2019). Bacteria isolated from Bengal cat (Felis catus × Prionailurus bengalensis) anal sac secretions produce volatile compounds potentially associated with animal signaling. PLoS ONE, 14. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0216846.

「肛門嚢の分泌物は、肉食動物が社会的コミュニケーションや、個体やグループのメンバーシップを識別するために使用されます」
「肛門嚢は縄張りを示すために犬の糞便に刺激臭のある液体分泌物を放出し、そのような分泌物には性別、生殖状態、個体認識に関する情報が含まれている可能性があります」
Dorrigiv, I., Hadian, M., & Bahram, M. (2023). Comparison of volatile compounds of anal sac secretions between the sexes of domestic dog (Canis lupus familiaris). Veterinary Research Forum, 14, 169 - 176. https://doi.org/10.30466/vrf.2023.1983063.3714.

「犬のような肉食動物は、粘性のあるニオイのある酸性の分泌物を含む、よく発達した肛門嚢を持っています」
Montagna, W., & Parks, H. (1948). A histochemical study of the glands of the anal sac of the dog. The Anatomical Record, 100. https://doi.org/10.1002/ar.1091000303.

「犬の肛門嚢腺は、他の哺乳類の分泌物に含まれる嗅覚結合タンパク質に関連するタンパク質を分泌し、化学的なコミュニケーションに貢献しています」
Janssenswillen, S., Roelants, K., Carpentier, S., Rooster, H., Metzemaekers, M., Vanschoenwinkel, B., Proost, P., & Bossuyt, F. (2021). Odorant-binding proteins in canine anal sac glands indicate an evolutionarily conserved role in mammalian chemical communication. BMC Ecology and Evolution, 21. https://doi.org/10.1186/s12862-021-01910-w.

「肉食動物は肛門嚢腺分泌物(ASGS)を使って匂いでコミュニケーションをとります。肛門嚢腺は、汗腺と皮脂腺が変化したもので、肉食動物に特有の特徴である」
Janssenswillen S, Roelants K, Carpentier S, de Rooster H, Metzemaekers M, Vanschoenwinkel B, Proost P, Bossuyt F. Odorant-binding proteins in canine anal sac glands indicate an evolutionarily conserved role in mammalian chemical communication. BMC Ecol Evol. 2021 Sep 26;21(1):182. doi: 10.1186/s12862-021-01910-w. PMID: 34565329; PMCID: PMC8474896.

「犬の肛門嚢内の細菌叢は、これまでされていたものよりも多様で豊富であり、個体間および直腸細菌叢の間で報告が異なります」
Bergeron, C., Costa, M., Souza, L., & Sauvé, F. (2021). Description of the bacterial microbiota of anal sacs in healthy dogs.. Canadian journal of veterinary research = Revue canadienne de recherche veterinaire, 85 1, 12-17 .


「犬の肛門嚢疾患は犬に多く見られ、下痢、皮膚疾患、特定の犬種、肥満などが素因となり、手動絞り出しと基礎疾患の治療が主な治療法となります。
用手による圧迫と潜在的な基礎疾患の治療が最も重要な治療でした」
「非腫瘍性肛門嚢疾患の発生率は、犬で15.7%、猫で0.4%と推定された。素因は、下痢、皮膚の問題、いくつかの犬種、特に小型犬、雄猫、ブリティッシュショートヘア、および犬の肥満であった」
「最も再発しやすい肛門嚢疾患は閉塞でした」
「健康な犬が肛門嚢閉塞を起こさないようにするため、または一度閉塞した肛門嚢の再発を防ぐために、トリマーや獣医師が定期的に肛門嚢を絞り出すことがあります」
「最も頻度の高い肛門嚢疾患は肛門嚢閉塞(犬で8.9%、猫で0.2%)であり、次いで炎症(犬で4.1%、猫で0.1%)、膿瘍(犬で2.8%、猫で0.1%)であった」
「食物の有害反応や細菌性腸炎は下痢や軟便を引き起こし、排便時に肛門嚢が自然に排出されなくなるため、肛門嚢の長時間の滞留や閉塞を引き起こします[ 17 ]。さらに、下痢は会陰部の炎症や腫れを引き起こし、肛門嚢管の開口部の閉塞や、その後の閉塞、炎症、膿瘍につながることもあります」
Corbee, R., Woldring, H., Eijnde, L., & Wouters, E. (2021). A Cross-Sectional Study on Canine and Feline Anal Sac Disease. Animals : an Open Access Journal from MDPI, 12. https://doi.org/10.3390/ani12010095.

「犬には一対の肛門嚢があり、これは内肛門括約筋と外肛門括約筋の間にある皮膚の陥入部です ( 1、2 )。肛門嚢は管によって肛門皮膚接合部とつながっており、排便時に肛門嚢内のアポクリン腺と皮脂腺によって生成された分泌物がここから排出されます。肛門嚢の分泌物の全内容物は、腺分泌物、肛門嚢と管の内側を覆う重層扁平上皮から剥離したケラチノサイト、細胞残渣、細菌や酵母などの常在微生物の混合物です ( 1 – 4 )。一部の細胞学的研究では、正常な肛門嚢に白血球と赤血球が存在することも報告されています ( 2、4、5 )。肛門嚢の機能は明確には解明されていないが、肛門嚢分泌物に含まれる揮発性化合物が犬の嗅覚コミュニケーションに役割を果たしている可能性が示唆されている(2、6)」
「細菌微生物叢は、特定の環境に生息する細菌と定義されます ( 9 )。健康維持に非常に重要で、消化や解毒に関与し、病原体と競合してその定着を防ぎ、免疫系と相互作用します ( 10-13 )。細菌微生物叢と免疫系の相互作用は、適切な自然免疫応答と獲得免疫応答を得るために不可欠です ( 13-15 )。さらに、微生物叢は皮膚表面や消化器、呼吸器、泌尿生殖器の上皮や粘膜の免疫系を刺激し、これらの領域を病原体から保護します ( 16 ) 。したがって、細菌微生物叢の不均衡は特定の疾患の発症と関連付けられています ( 16-18 ) 」Bergeron CC, Costa MC, de Souza LB, Sauvé F. Description of the bacterial microbiota of anal sacs in healthy dogs. Can J Vet Res. 2021 Jan;85(1):12-17. PMID: 33390648; PMCID: PMC7747662.

「犬の肛門嚢は、角質化した重層扁平上皮で裏打ちされた、一対の外皮肛門憩室です」
Kokila, S., Veena, P., Kumar, R., & Srilatha, C. (2016). Clinical studies on anal tumors in dogs. International Journal of Approximate Reasoning, 50, 629-631. https://doi.org/10.18805/IJAR.11178.

「腸内微生物叢は成人の健康状態を維持する上で重要な役割を果たしており、その構成の変化はさまざまな病気につながる可能性があります」
D’Argenio, V., & Salvatore, F. (2015). The role of the gut microbiome in the healthy adult status.. Clinica chimica acta; international journal of clinical chemistry, 451 Pt A, 97-102 . https://doi.org/10.1016/j.cca.2015.01.003.

 


 


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