2024/09/14
私の健康状態の変化はまさに奇跡です。
ふじみ野市の大井みどり動物病院です。
犬猫にも炎症性腸疾患(IBD)という病気があります。IBDはいまひとつ原因がはっきりしない慢性腸炎のひとつです。
慢性的な嘔吐や下痢が特徴です。様々な因子が関連している疾患で、食事、ステロイド、抗菌薬、免疫抑制剤などで治療を行います。
人でも、同様な疾患が疾患があり、前首相もこの類の疾患だったようです。下痢や腹痛はつらいものであり、一日何回もトイレにいくのは日常生活の差し支えがあるでしょう。
最近、人で、肉食ダイエット(肉主体の炭水化物の少ないケトン食)により、IBDが劇的に改善した非常に興味深い報告があります。
その人の報告は、アンケートであり、質が良い報告とは言えませんが、本人の感想が素晴らしくよいのです。
誇大広告のような大げさな表現がありますが、きちんとした学術の報告ですから、信頼できるでしょう。
それらを読むと、肉食ダイエットで、人生が変わったと言っても過言ではないようです。例えば「私の健康状態の変化はまさに奇跡です」とあります。
長年の苦悩から開放された事実が伝わってきます。しかも、頭も冴え、絶好調な方もいるようです。
よくなった要因として、加工食品、植物性の繊維質の摂取が減少したことが挙げられています。
また、炭水化物摂取を減らしたことで、血糖値が安定し、体内のケトン体が増えたことの関与もあるようです。
それらの結果、腸内の細菌が整ったことで、腸の炎症反応が消失したことが考えられます。
犬猫でもIBDは一般的な疾患であり、苦悩を抱えている犬猫は少なくありません。
もし、同様な肉食ダイエット療法を犬猫で行ったら、犬猫は肉食動物ですから、人よりもよい反応が得られる可能性が十分あります。
ドライフードは加工食品であり、植物性の原料が、使われており、繊維も豊富に含まれていますので、人の原因と共通点が多く、悪影響がありそうです。一般的なドライフードには、犬猫には本来不要な炭水化物も豊富に含まれています。
これらにより、腸内の細菌叢が悪化したり、腸の粘膜に炎症が生じるかもしれません。
犬猫も食事療法をしますが、たいていの獣医師は、アレルギー反応が少ないと謳われているドライフードを使います。
そのようなドライフードも、やはり、加工食品であり、植物性の原料が使われ、繊維も豊富なので、療養食として、大して効果がないかもしれません。原料を工夫したりしていますが、ドライフードという形状では、どれも似たりよったりかもしれません。
実際、現場では、ドライフードの療養食だけで、IBDが劇的に改善した経験はありません。
犬猫のIBDの主な治療は、炎症反応を抑えるステロイドが治療の柱になります。ステロイドは初期治療で劇的な効果が認められることがよくあります。
もしかしたら、ドライフードで、腸に炎症を起こし、ステロイドで炎症を止めているかもしれません。
こういった治療をマッチポンプ医療だと揶揄する方もいるようです。
私は様々な、報告から、肉食ダイエットにしたら、犬猫のIBDはかなり良くなる可能性があるのではないかと考えています。
やはり、病気の原因をたどっていくと、食事とストレスに集約されるように思います。
一般的には、犬猫は人ほどストレスはないと考えています。その分食事が重要であり、もし、食事を肉食ダイエットにしたら、IBDだけでなく、多くの疾患が減少するかもしれません。腸に良い食事は、ほかの臓器にもよい影響をあたえるし、日常的な食事としても適切でしょう。
そう考え、子犬から肉食ダイエットで育てた私の愛犬は、元気で、IBDのほか、疾患はなく、いまのところ、健康です。
また、人工的に飼育されているアカオオカミはIBDが原因で死亡することが多く、この原因として、ドライフードの関与が示唆されています。
このことは上記の考えを補強するものだと考えます。
犬猫の栄養学は、犬猫は肉食動物だということを根底で考えることが重要でしょう。
参考文献
「ヒトの炎症性腸疾患(IBD)と同様に、犬の特発性IBDの発症には、粘膜免疫系、宿主の遺伝的感受性、環境因子(例:微生物叢、栄養)の相互作用という3つの主な要因が根本的であると考えられています[1] - [3]」
「腸内細菌叢がIBDの発症に重要な役割を果たしており、腸内細菌叢の調節が粘膜炎症の治療に有益である可能性を示唆している」
「犬のIBDの病因は十分に解明されていないが、臨床観察、ヒトの研究、動物モデルから、腸内細菌叢が異常な宿主反応に影響を与える要因の1つであるという証拠がある」
Rossi G, Pengo G, Caldin M, Palumbo Piccionello A, Steiner JM, Cohen ND, Jergens AE, Suchodolski JS. Comparison of microbiological, histological, and immunomodulatory parameters in response to treatment with either combination therapy with prednisone and metronidazole or probiotic VSL#3 strains in dogs with idiopathic inflammatory bowel disease. PLoS One. 2014 Apr 10;9(4):e94699. doi: 10.1371/journal.pone.0094699. PMID: 24722235; PMCID: PMC3983225.
「KD の治療効果は、食事の 3 つの特徴の組み合わせから生まれると考えられます。
(1)炭水化物の摂取量を減らすと、肥満、メタボリックシンドローム、糖尿病前症、糖尿病の人の体重減少を促進し、血糖コントロールを改善することができます(7~9)。
(2)食事制限の性質上、免疫誘発物質として作用する可能性のある食品を含む「問題のある」食品の排除が容易になることが多い。
(3)肝臓で生成されるケトン体は、燃料基質であると同時にホルモンに似た、強力な調節分子およびシグナル分子である。細胞表面受容体、インフラマソーム阻害(10)、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害(11)、エピジェネティック制御、および1,000種類を超えるタンパク質のリシンβ-ヒドロキシ酪酸化プロセスによる翻訳後修飾因子としての働きを介して、免疫系と代謝を制御している(12)」
「人間の肉食は、本来は除去食であり、通常はケトーシス状態を誘発するため、その治療効果は生物学的に妥当性があります」
「これまでの人生で経験したことのないほど気分が良くなり、週 6 日運動し、薬も必要なく、これまでの人生で経験したことのないほど日々エネルギーに満ち溢れています。私の健康状態の変化はまさに奇跡です」
「ケトジェニックダイエットは私の人生を変えました。将来がないと思っていた私の未来をよみがえらせてくれました。私は肉食を含むさまざまなケトジェニックダイエットを試し、個人的な興味からそれを続けていますが、ケトーシスから長期間抜けると、症状が再発します。一生この食生活を送っても構いません。1日に12回も血便が出ないなら、でんぷん質や甘いものは食べない価値はありません」
「肉食ダイエットをすると、20歳の大学フットボール選手だったときよりも気分が良くなります。体重が170ポンドのときでも、身体的にはこれまでで最高の状態です。ベンチプレスでは225ポンドを10回挙げることができます。頭が明晰なのは本当に素晴らしいです。このライフスタイルのおかげで、大腸炎を心配する必要が6年間ありませんでした」
「治療要素に関しては、除去食、加工食品や「自己免疫誘発性」の可能性がある食品の摂取削減(広く漠然とした説明ではあるが)は、特に敏感な胃腸系や免疫系を刺激する環境刺激を除去することで症状を緩和できる可能性がある。特に肉食に関しては、IBDにおいて繊維除去が役割を果たしている可能性もある」
Nicholas G. Norwitz, Adrian Soto-Mota.Case report: Carnivore–ketogenic diet for the treatment of inflammatory bowel disease: a case series of 10 patients. Front. Nutr., 02 September 2024 Sec. Clinical Nutrition
Volume 11 - 2024 | https://doi.org/10.3389/fnut.2024.1467475
「回顧的研究により、胃腸(GI)疾患、特に炎症性腸疾患(IBD)が、飼育下の成体のアカオオカミ(Canis rufus)の死亡率の第2位の原因であることが判明しています。最近の分子生物学的研究では、腸内微生物組成の不均衡が飼い犬のIBDと密接に関連していることが示されています」
「ドライフードを与えられたオオカミの腸内微生物叢の組成は、丸ごと肉と野生の混合食を与えられたオオカミの腸内微生物叢の組成とは有意に異なっていました」
「人間の保護下で飼育されているアカオオカミは、一般的にドライドッグフードを含む食事を与えられますが、市販の肉をドッグフードに混ぜて与えられる個体もおり、少数のオオカミにはドッグフードなしで丸ごと肉または死骸が与えられています。施設では野生の食事を模倣しようとしますが、これらの飼育下の食事は、野生のオオカミが自然環境で摂取する栄養成分とはかけ離れている可能性があります ( Association of Zoos and Aquariums Canid Taxonomic Advisory Group, 2012 )。飼育下の食事は、動物園で飼育されている多くの種の腸内微生物叢の構成と機能的多様性を変える可能性があることが示されています ( McKenzie et al., 2017 )。これらの変化は、免疫機能、栄養摂取、消化管の健康の低下を引き起こす可能性があります(McKenzie et al.、2017)」
「人間の保護下で飼育されているアカオオカミは、一般的にドライドッグフードを含む食事を与えられますが、市販の肉をドッグフードに混ぜて与えられる個体もおり、少数のオオカミにはドッグフードなしで丸ごと肉または死骸が与えられています。施設では野生の食事を模倣しようとしますが、これらの飼育下の食事は、野生のオオカミが自然環境で摂取する栄養成分とはかけ離れている可能性があります ( Association of Zoos and Aquariums Canid Taxonomic Advisory Group, 2012 )。飼育下の食事は、動物園で飼育されている多くの種の腸内微生物叢の構成と機能的多様性を変える可能性があることが示されています ( McKenzie et al., 2017 )。これらの変化は、免疫機能、栄養摂取、消化管の健康の低下を引き起こす可能性があります(McKenzie et al.、2017)」
「腸には、病原体から身を守り、消化できない食物炭水化物を発酵させ、免疫システムの発達を助ける細菌が大量に生息しています(Omori et al., 2017)。食事は細菌分類群の存在や豊富さに影響を与え、イヌ科動物の消化管の健康に悪影響を及ぼす可能性があります(Suchodolski et al., 2012b ; McKenzie et al., 2017)」
Bragg M, Freeman EW, Lim HC, Songsasen N, Muletz-Wolz CR. Gut Microbiomes Differ Among Dietary Types and Stool Consistency in the Captive Red Wolf (Canis rufus). Front Microbiol. 2020 Nov 10;11:590212. doi: 10.3389/fmicb.2020.590212. PMID: 33304337; PMCID: PMC7693430.
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