ふじみ野市
大井みどり動物病院
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10時〜

2024/09/21

ドライフードをふやかすと

消化に悪い
 
 
 
 

 

 

ふじみ野市の大井みどり動物病院です。

 



多くのペットショップで、子犬や子猫に、ドラフードを「ふやかして」与えています。また、胃腸が不調な時、ドライフードを「ふやかす」ことを指示する獣医師がいます。

 


おそらく、ふやかすことで「消化しやすくなるから」というのが、大きな理由のひとつだと思います。

 


でも、調べてみると、犬ではドライフードをふやかすと、消化がよくなるという、科学的な根拠はみつかりません。

 


限られた研究結果では、逆に、一部の病原菌の増加を引き起こし、消化に良い効果をもたらさず、犬にストレスを引き起こし、腸の健康に潜在的な脅威をもたらす可能性があり、推奨されません、とあります。

 


つまり、ドライフードをふやかすと、消化がよくなることは証明されておらず、逆に、不衛生になり、ストレスがかかる可能性があるのです。実験では、下痢が増えました。

 


したがって、消化をよくするために、ドライフードをふやかすことは、かえって、消化を悪化させる可能性が高いといえます。

 


ふやかすと、水分補給になるからよいともありますが、よくわかりません。食事がとれるなら、水も飲めるはずであり、自然な飲水欲に従う方が無難だと思います。

 


尿石症で濃い尿をうすめる場合、採食困難な場合なケースでは、飲水量アップに一役かったり、食べやすくなるかもしれませんし、また、風味がでると食欲が増す可能性はありますが、デメリットを上回るかよくわかりません。それなら缶やペースト製品を使うのが普通でしょう。

 


ドライフードをふやかしたものが、活きるケースはあまり思い当たりません。

 


食材によっては、ふやかすことで、消化がよく場合はあるかもしれませんが、いまのところは、ドライフードをふやかしても消化に良い影響はありません。

 


結局、ドラフードをふやかす科学的な利点は証明されておらず、悪影響の懸念があり、特に消化が悪くなり、下痢する可能性がある、というところでしょうか。また、ふやかしたら、2時間位内に食べたほうがよいでしょう。

 


よって、基本的には、消化が悪くなり、不衛生なため、ドライフードはふやかさないほうがよい、というのが当院の結論です。これはペット栄養学会会長の左向先生との見解やペットフードガイドラインとは異なります。(両者ともふやかすと消化によくなる根拠がみつけられませんでした)

 


さらにロイヤルカナンの獣医師に電話でこの件について、お聞きしましたが、「ふやかしたほうが良い根拠はない」「ふやかすと悪いという根拠もない」とのご回答。

 


ネットをみても、ドライフードの消化に関しては、根拠のない、ふやかし賛成派しかみつけられません。否定派は私くらいのようです。

 


でも、現場での経験からいうと、ふやかしても、ふやかさなくても、どっちでも大差はないだろう、というのが本音ですが、面倒ですし、原則、やらないでよいと考えています。また、私は具体的な質問を受けない限り、そのペットショップなどのふやかす指導をくつがえすことはしません。

 


もしかしたら、ふやかすことは、胃内での消化は良くなるかもしれませんが、腸の細菌叢には悪影響はあり、仔犬の大事なその形成時期にふやかしフードを与えるのはよくないかもしれません。また、ストレスホルモンを増やしたくないので、ふやかすのは控えるのが無難でしょう。

 


人の料理では、ふやかすことは調理過程の一部と捉えることができ、それがそれほど悪い影響を与えるとは思えませんので、自然な食材をふやかすことと、加工度が高いドライドックフードをふやかすことは何か大きな違いがあるのかもしれません。

 


権威のある日本の複数の栄養学の専門家、ペットフードガイドラインや多くの獣医師とは意見が異なりますが、私はそう考えています。

 


当院の結論は、

「ドライフードをふやかすと下痢するかもしれいない」
「ドライフードをふやかすと消化によくなるは、科学的根拠のない慣習」
「ドライフードをふやかすと、微生物学的リスクが増加する」
「ドライフードをふやかしたら、すぐ食べきりましょう」


となります。







参考文献など

「ドライフードを水で柔らかくすると、犬の腸の健康と栄養の吸収に良いと一部の飼い主は考えていますが、この考えには科学的な根拠がほとんどないようです」
「全体的に、SDF の給餌は犬のコルチゾール レベルを高め、腸内微生物多様性を高める効果を生み出しましたが、一部の病原菌の増加を引き起こし、犬の腸内微生物叢の乱れや代謝障害につながる可能性があります。結論として、SDF の給餌は消化に良い効果をもたらさず、犬のストレスを引き起こし、腸の健康に潜在的な脅威をもたらしました。したがって、SDF は犬の給餌には推奨されません」
「SDF では DF よりも便が柔らかくなり、下痢の割合が高くなりました。これは、腸内細菌の乱れが原因である可能性があります」
「若い動物の場合、一部のペットフード会社は、給餌する前に膨化食品を柔らかくすることを提案しています。しかし、これらの声明には厳密な実験に基づく証拠が欠けています」
Zhang L, Yang K, Jian S, Xin Z, Wen C, Zhang L, Huang J, Deng B, Deng J. Effects of Softening Dry Food with Water on Stress Response, Intestinal Microbiome, and Metabolic Profile in Beagle Dogs. Metabolites. 2022 Nov 16;12(11):1124. doi: 10.3390/metabo12111124. PMID: 36422265; PMCID: PMC9697261.


「2006 年と 2008 年に複数の州で発生したサルモネラ症の関連した 2 件の流行の調査では、ドライ ドッグ フードが感染源であることが判明しました (CDC 米国疾病予防管理センター2008 )」
「製品の安全性に関する消費者の懸念が高まっています (Finley ら2006 ; Adley ら2011 ; Buchanan ら2011 ; Li ら2012 ; Lambertini ら2016a )。これにより、ドライ ペットフードとおやつの微生物学的特性をよりよく理解する必要が生じました」
「再水和したペットフードは、消費または廃棄されるまでに長期間室温に置かれる可能性があるため、家庭環境におけるS. entericaのレベルが上昇する可能性があります」
「この研究の結果は、ドライフードを十分な量の水で戻すと、S. entericaの増殖を促す可能性があることを立証しています。したがって、S. entericaが存在する場合、戻したドッグフードを食べずに長時間放置すると、特に気温が高い場合は、犬とその飼い主の両方にサルモネラ症のリスクが増加する可能性があります。観察されたラグタイムに基づいて、本研究では、食べ残したフードを戻してから約 2~3 時間以内に廃棄または冷蔵することで、これらのリスクを効果的に管理できることも示しています。この研究のデータは、ドライフード中のS. entericaの定量的暴露評価にも役立ちます (Lambertini et al. 2016c )」
Oni, R., Lambertini, E., & Buchanan, R. (2014). Assessing the potential for Salmonella growth in rehydrated dry dog food. International Journal of Food Contamination, 3, 1-7. https://doi.org/10.1186/s40550-016-0043-5.


「ドライフードをわざわざふやかして愛犬に与えるのは、『消化しやすくさせるため』」
「すでに開封済みのドライフードをふやかせば、愛犬の胃腸への負担を軽減させてあげられます」
「子犬の場合、消化器官がまだ発達していない生後2~3ヵ月齢までは、ドライフードをふやかして与えるのが一般的です」
「ドライフードをふやかして愛犬に与えると役立つシーンは、少なくありません」
hotto ほっとあんしん、うちのコとの暮らし. 「【獣医師監修】ドッグフードをふやかすメリットやデメリットは?早くふやかす方法やポイント、注意点!」. https://hotto.me/11257 (参照2024/09/11)


「生後約 20 日から 60 日くらいまでの期間をいいます。 犬用や猫用の離乳期用フードも販売されていますが、 これらが手に入らない場合には、 子犬用 (成長期犬用) や子猫用 (成長期猫用) フードをお湯やミルクでふやかして与えることも可能です」
飼い主のためのペットフード・ガイドライン~犬・猫の健康を守るために~
発 行:環境省自然環境局総務課動物愛護管理室
作 成:(社)日本科学飼料協会
発行日:平成21 年10 月( 第二版)


「ふやかしたほうが良い根拠はない」「ふやかすと悪いという根拠もない」
ロイヤルカナンテレフォンサポート 2024/09/12電話

 


 


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