ふじみ野市
大井みどり動物病院
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2024/10/21

90%が歯周病

肉と骨は歯にくっつかない
 
 
 
 

 

 

ふじみ野市の大井みどり動物病院です。

 
 

3歳の小型犬の90%が歯周病になっているという報告あります。

 


私はその原因として、1番の割合を占めるのは食事であり、特に一般的なドッグフードだと考えています。つまり加工度の高い炭水化物が多く、歯ごたえの少ない食事がその主な原因だと考えています。一般的には、歯のケアをしないから、という本質でない理由かもしれません。

 


人では、農業発達とともに、穀物などの炭水化物をたくさん摂るようになって、歯周病が増加したという考えがあります。

 


本来、犬は肉食であり、肉には炭水化物がほとんど含まれませんが、ドライドッグフードの半分くらいは炭水化物であると言え、現在の多くの犬は、本来不要である炭水化物を過剰に摂取している可能性があり、これが、歯周病と関連している可能性はあります。

 


また、ドライドッグフードは肉に比べ、歯にくっつきやすいと考えられます。コーンフレークのようなシリアルな食べものは、性状がドッグフードと似ています。牛乳で浸してないそのままのコーンフレークを食べたら、歯にくっつくので、食べにくいでしょう。水無しでは、歯にくっつきやすいうえのどを通りにくく、なかなか食べにくいでしょう。犬は毎日そのように感じているのかもしれません。

 


確かに、外来の身体検査で、犬の口の中を見ると、ドッグフードが歯にくっついていることがしばしばありますので、食後、ドライドッグフードはしばらく口内にとどまっているでしょう。

 


慢性的な歯周病はさまざまな疾患とかかわっています。私があらゆる病気の原因として、関連していると考えているインスリン抵抗性が、歯周病により増加することが知られています。よって、歯周病を起こさないことは健康管理に重要です。歯周病があると糖尿病に罹患しやすくなり、糖尿病は様々な疾患を惹起させます。小型犬によくある弁膜症との関連もあるかもしれません。

 


私の犬は、歯磨きをしたことがありませんが、歯周病はありません。下顎が短く、かみ合わせがよくないため、歯石や歯周炎のリスクが高いのにもかかわらず、歯はきれいです。3歳になりますが、歯周炎の気配はまったくありません。保護犬ですが、家に来てからは、ドライフードはほとんど与えておらず、肉食ダイエットで育てています。

 


ちなみに、ウェットフードの方が、ドライフードより歯周病になる可能性が高いようです。やわらかいものほど、歯周病になる可能性があります。

 


それから、私の犬には、骨を定期的に与えています。この歯磨き効果もあるでしょう。

 


一般的には骨は与えていけないものに入りますが、犬が本来食べてきたものなので、与えることには妥当性があります。骨の鋭利な断端が消化管を傷つけたり、食道に詰まったり、するから危ない、というのが一般的ですが、ボイルなど加工した骨はそのリスクがあるかもしれませんが、三年間与えてみて、問題は生じていませんし、骨髄はよい栄養源なので、適切なサイズや硬さの骨は、本能の噛む喜びを満たす、他犬に推奨はしませんが、犬に与えるよい食材の一つだと考えています。

 


したがって、犬は3歳くらいで、90%が歯周病になっている大きな要因は、ペットフードだという結論です。その主な原因は、炭水化物が多く、歯にくっつきやすく、噛み応えがない、ことが考えられます。

 


逆を言えば、噛み応えがある、炭水化物が少ない、犬が好む自然な食材は歯周病の予防に有効でしょう。

 


AIにそのような食材はどんなものか聞いてみると以下のうような答えでした。

 


「生肉: 生肉は、犬の狩猟本能を刺激し、噛み応えも十分です。ただし、寄生虫など衛生面には十分注意が必要です。

 


骨: 骨をしゃぶることは、犬にとって自然な行動であり、歯の健康にも良いとされています。ただし、骨の種類によっては消化不良を起こす可能性もあるため注意が必要です。

 


鶏の軟骨: 鶏の軟骨は、噛み応えがあり、関節の健康にも良いと言われています。

野菜: カボチャ、ニンジン、サツマイモなどは、加熱することで柔らかくなり、消化しやすくなります。

果物: りんご(芯と種は取り除く)、バナナなどは、犬が好む果物です。ただし、過剰な摂取は避けるべきです」


 
との回答であり、穀物は入っていませんし、大まか、同意です。


 
すごく簡単にいえば、犬に適した食事は、微生物学的に安全な「肉と骨」だと考えますが、獣医学では、そのような記述はおそらくありません。


 
肉と骨は、かなり歯にくっ付きにくいでしょう。現に、うちの犬の歯に、それらが、残存していたり、くっ付いていたことはありません。


 
自然な食材でも、果物や芋などの炭水化物が多いものは歯に付きやすい傾向があります。ドライフードのように炭水化物を加工すると更に、歯にくっ付きやすくなりそうです。

犬猫に炭水化物は不要ですが、栄養素として不要だという他、歯にくっつくといった負の作用からも、その理屈がうかがえるのは、非常に興味深いです。

 





参考文献

【歯周病の病理における食事の役割は比較的見過ごされてきました。歯周炎のリスク増加に関連する主な食事要因には、加工炭水化物、繊維摂取量の低さ、飽和脂肪、および高タンパク質摂取が含まれます(Woelber and Tennert, 2020)

食事中の炭水化物の摂取量が多いと虫歯になることはよく知られています ( Moye et al., 2014 ; Wang et al., 2019 )。

最近の研究では、炭水化物の摂取量の増加が歯周病の危険因子としても特定されており、虫歯と歯周病の統合仮説を支持しています ( Nyvad and Takahashi, 2020 )。このような知見は、農業統合と食事の影響が低い社会では口腔疾患の負担が低いこと ( Crittenden and Schnorr, 2017 ; Crittenden et al., 2017 )、および新石器時代革命で歯科疾患の発生が出現し、それに並行して穀物の消費量が増加したこと ( Adler et al., 2016 ) と一致しています。

Hamasaki et al. は、高炭水化物、低脂肪の食事と歯周病の発生との間に有意な関連性があることを発見しました。

進行した歯周病のグループでは脂肪由来のカロリーの割合が有意に低く、低脂肪・高炭水化物の食事が歯周病発症と関連していた(Hamasaki et al., 2017)。これらの知見は、コレステロール値が高い被験者(Izumi et al., 2009)とオメガ3脂肪酸の摂取量が多い被験者(Iwasaki et al., 2010 )で歯周病発症率が低下することを特定した過去の研究と一致している。

糖分/炭水化物摂取量の増加と歯周病発症率の上昇とのこのような関連性は、高血糖と終末糖化産物によって引き起こされる全身性炎症によって説明できるかもしれない(Aragno and Mastrocola, 2017 ; Nyvad and Takahashi, 2020)。糖分摂取量の増加は、口腔バイオフィルム内で局所的に作用して酸化ストレスと微生物叢異常を引き起こし、歯周炎につながる可能性がある。この仮説は、歯肉上および歯肉下バイオフィルム発達に関するin vitroの知見と一致しており、歯肉下バイオフィルムの成長は、糖分解性歯肉上菌種による事前のコロニー形成と対応する細胞外多糖類合成に大きく依存していた(Thurnheer et al., 2016)。歯周病の発症と炭水化物摂取の関係、穀物摂取の増加によって特徴づけられる歴史的時代における口腔疾患負荷の増加の裏付け、および口腔歯肉縁下バイオフィルムの多種多様な性質を考慮すると、このような知見は、歯周病における炭水化物摂取の全身的および/または局所的影響をよりよく理解するための今後の調査を正当化するものである。

歯周病とインスリン抵抗性: 歯周病は、炎症を介してインスリン抵抗性を悪化させることがあります。歯周病の過程で放出される炎症性サイトカインが、インスリン抵抗性を引き起こし、これにより血糖調節が悪化し、糖尿病のコントロールがさらに困難になる可能性があります (Gurav, 2012)】

Sedghi LM, Bacino M, Kapila YL. Periodontal Disease: The Good, The Bad, and The Unknown. Front Cell Infect Microbiol. 2021 Dec 7;11:766944. doi: 10.3389/fcimb.2021.766944. PMID: 34950607; PMCID: PMC8688827.



【糖尿病と歯周病の双方向性の関係: 糖尿病は歯周病のリスクを約3倍に増加させ、また血糖コントロールが悪化すると歯周病も悪化します。一方で、歯周病はインスリン抵抗性を増加させ、血糖管理をさらに悪化させることが確認されています (Preshaw et al., 2011)。

歯周治療の効果: 歯周病の治療がHbA1cを改善し、糖尿病患者の血糖コントロールに良い影響を与えることが示されています (Pucher & Stewart, 2004)。

粘着性のある食べ物とプラークの蓄積: 砂糖を含む粘着性の食品(例:甘いパン、ロールパン、モチなど)の摂取が、プラークの蓄積を促進し、歯周病のリスクを高めるとされています。プラークが蓄積すると、歯茎の炎症や歯周病が進行しやすくなります (Chung et al., 1977)。

食べ物の粘着度とプラーク残留: 食品の粘着度と歯への残留時間には関連性があり、特にクッキーやクラッカー、ポテトチップスなどが歯に残りやすく、プラーク形成を助長します。逆に、キャラメルやゼリービーンズなど、粘着性が高い食品でも、口の中で速やかに除去されるものもあり、必ずしも全ての粘着性食品が歯周病リスクを高めるわけではありません (Kashket et al., 1991)。

ドライフードは、噛む際に歯の表面を物理的にこすり、プラークを除去する効果があります。そのため、ウェットフードよりもドライフードを与える犬は、歯周病のリスクが低いことが報告されています (Oba et al., 2022)

ドライフードだけでなく、噛むおもちゃやデンタルチューなどを使用することで、歯垢や歯石の蓄積が減少し、歯周病の進行を遅らせることができます。特に、ローハイド(生皮)などの噛む素材は、歯周病の予防に効果的です (Harvey et al., 1996)

硬い食べ物は、歯垢の機械的な除去に役立つため、柔らかい食べ物よりも歯周病の予防に効果的です。さらに、リン酸塩などの添加物を含む食事は、歯石の形成を抑える効果があることも示されています (Brunetto, 2018)

犬の歯周病の発生率に関する研究では、3歳以上の犬において歯周病の発生率が非常に高いことが報告されています。例えば、ある研究では、小型犬の3歳以上の犬の90%以上に歯周病の兆候が確認されています (Pavlica et al., 2003)。また、他の研究では、犬全体における歯周病の発生率が86.3%であると報告されています (Stella et al., 2018)。

ドライキブルダイエットはPDのリスクを減らすと一般に信じられていますが、これは証明されていません。

ドライフードダイエットはウェットフードや缶詰フードダイエットよりも口腔の健康に良いというのが常識ですが、この見解は挑戦されています[8]


PDに関する追加の懸念は、細菌血症に反応して炎症細胞と副産物を放出することに起因する全身性疾患を発症するリスクの増加との関連です。PDとの関連が文書化されている全身性疾患には、慢性気管支炎、肺線維症、心内膜炎、間質性腎炎、糸球体腎炎、および肝炎が含まれます[15]。PDによって影響を受ける最も一般的に引用される二次臓器系は心血管系です。横断的、症例対照、および縦断的研究は、ヒト[16]でこの関連性を示しており、観察研究では、犬[15]でも同じ関連性が指摘されています。例えば、59,296匹の犬を対象とした歴史的な観察コホート研究では、PDの重症度と心内膜炎や心筋症などの心血管関連疾患のリスクとの間に有意な関連性が見つかりました。したがって、著者らは、犬の歯の健康と日常的な予防ケアの重要性に対するより大きな認識が全体的な健康を改善すると結論付けました[15]。アメリカ獣医歯科協会は、ペットの保護者に「口腔内細菌は腎臓と肝臓によってろ過され、これらの臓器内に微小膿瘍を引き起こす可能性がある」と警告しています。これは、時間の経過とともにこれらの重要な臓器の機能の低下につながります。さらに、これらの細菌が心臓弁に付着し、心内膜炎と呼ばれる病気を引き起こす可能性があることが示唆されています」[15]】

A cross-sectional study to estimate prevalence of periodontal disease in a population of dogs (Canis familiaris) in commercial breeding facilities in Indiana and Illinois
Judith L. Stella ,Amy E. Bauer ,Candace C. Croney
Published: January 18, 2018
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0191395



【歯周病とインスリン抵抗性: 歯周病は、炎症を介してインスリン抵抗性を悪化させることがあります。歯周病の過程で放出される炎症性サイトカインが、インスリン抵抗性を引き起こし、これにより血糖調節が悪化し、糖尿病のコントロールがさらに困難になる可能性があります (Gurav, 2012)


台湾の全国的なコホート研究では、歯周病が弁膜疾患(VHD)の発症リスクを増加させることが確認されており、歯周病の治療を行うことでそのリスクが低下することが示されています (Sia et al., 2021)。

心臓弁手術での病原菌の検出: 心臓弁置換術を受けた患者から採取された弁組織の微生物学的解析では、口腔内の歯周病関連菌が心臓弁に存在する可能性が示唆されています。具体的には、Porphyromonas gingivalisや他の歯周病菌が心臓弁組織で見つかっており、これらが弁膜症に関連する可能性が指摘されています (Moreno et al., 2017)

炎症と心血管疾患の関係: 歯周病によって引き起こされる慢性的な炎症が、血管内のプラークの形成や心血管疾患、さらには弁膜症に寄与する可能性があることも報告されています。この炎症は、心血管系に悪影響を及ぼすリスクを高めます (Hajishengallis, 2014)

3歳以上の犬の発生率: ある研究では、3歳以上の犬の約80%以上が何らかの歯周病を発症していることが報告されています (Enlund et al., 2020)

歯周病の発生率は犬の年齢が増加するにつれて急激に増加し、特に小型犬では早期に発症することが確認されています (Stella et al., 2018)

2歳未満の若年犬では、歯周病の発生はほとんど見られませんが、中年期(2歳から7歳)に入ると急激に増加します (Hirai et al., 2013)。

食事が歯周病の発症と進行に影響を及ぼす主な手段は、その食感(研磨作用)であり、歯垢の蓄積に影響します(Gorrel、1998)。何十年もの間、研究者は犬の歯垢蓄積を防ぐ機械的な方法として食事の食感の影響を研究してきました。硬い/固形の食べ物を与えられた犬は、挽いたりミンチにしたりした同じ食べ物を与えられた動物と比較して、基本的に正常な歯と歯茎を保持していることが報告されています(Burwasser and Hill、1939 ; Krasse、1960 ; Saxe et al.、1967)。最も重要なことは、ある研究で、ミンチ食品に必要な最小限の咀嚼でさえ、まったく咀嚼しない(つまり、胃挿管で給餌された犬)場合と比較して、ある程度の浄化効果または保護効果があると報告されたことです(Egelberg、1965a)。

食事が口腔衛生に与える影響はよく知られており、歯周病の発症と進行に対する主な影響は、食感と歯垢の蓄積に影響を与える能力によるものです ( Gorrel、1998 )。過去には、食事の食感は歯垢の蓄積を防ぐ機械的な方法であることが示されました ( Burwasser および Hill、1939 ; Krasse、1960 ; Egelberg、1965a ; Saxe ら、1967 )。硬い食べ物を与えられた犬は基本的に正常な歯と歯茎を保持していましたが、柔らかい食べ物 (同じ食べ物ですが、粉砕して水で混ぜたもの) を与えられた犬は、歯肉炎、歯垢、歯石を発症しました ( Burwasser および Hill、1939 )。さらに、固形食品の場合、歯肉は正常に見え、ほとんどの歯肉溝には細菌が存在しませんが、軟らかい食品(同じ食品ですが、細かく刻んで混ぜてドロドロにしたもの)の場合、歯肉炎が発生し、より多くの溝で細菌培養が陽性となり、結果として生じた微生物叢は歯周病に関連するものと似ていました(Krasse、1960)】

Oba PM, Sieja KM, Keating SCJ, Hristova T, Somrak AJ, Swanson KS. Oral microbiota populations of adult dogs consuming wet or dry foods. J Anim Sci. 2022 Aug 1;100(8):skac200. doi: 10.1093/jas/skac200. PMID: 35641105; PMCID: PMC9387596.
 
 


 


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