2024/11/27
穀物はいらない
ふじみ野市の大井みどり動物病院です。
犬にとって穀物が必ずしも必要ではないという考え方が議論されるようになりました。穀物を含む従来のペットフードに代わる選択肢として「穀物を含まない(シリアルフリー)フード」が注目されています。この理由の一つは、犬の進化的な背景、つまり祖先であるオオカミの食生活とその消化能力に基づくものです。
オオカミは肉食動物として知られていますが、わずかな植物性の食材も摂取していました。しかし、その主要な栄養源は動物の肉や脂肪であり、穀物のような炭水化物を主とする食事ではありませんでした。こうした生物学的背景を考えると、犬の消化器官は主に動物性タンパク質や脂肪を消化吸収することに特化していることが分かります。現代の犬が穀物を含む食事を消化できるのは、長年にわたる人間との共生による適応の結果とされていますが、それが穀物を積極的に必要としている証拠ではありません。
穀物を含む食事には、犬の消化や栄養吸収において潜在的な問題点が存在します。たとえば、小麦やトウモロコシにはグルテンやフィチン酸などの抗栄養因子が含まれており、これらは一部の犬でアレルギーや消化不良を引き起こす原因となることがあります。また、穀物に多く含まれる複雑な炭水化物や繊維は、犬の消化酵素では完全に分解されにくいことが知られています。このため、腸内での過剰な発酵を引き起こし、ガス(胃拡張や胃捻転の要因)や下痢の原因になることもあります。一方で、穀物を含まないフードでは、こうした成分が排除されているため、犬の消化がよりスムーズに行われ、効率的な栄養吸収が可能になるとされています。
穀物を含まない食事の消化効率が優れていることを示す研究もあります。たとえば、Chiofaloら(2019年)の研究では、穀物フリーの食事が穀物を含む食事と比較してタンパク質や脂肪の見かけの消化率が高く、さらに炭水化物の大腸発酵がより安定していることが示されました。この安定性は、腸内細菌のバランス維持に寄与し、腸内環境の健康を促進します。こうしたデータは、シリアルフリーの食事が犬の自然な消化能力に適している可能性を裏付けるものです。
さらに興味深いのは、シリアルフリーフードが犬の栄養的な要求を満たすだけでなく、必要な食事量を減少させる可能性がある点です。穀物を含むフードでは、多くのエネルギーが消化に費やされ、犬の体が吸収できる栄養が限られてしまう場合があります。一方、穀物フリーは消化効率が高いため、少量の食事でも十分なエネルギーと栄養を供給できる可能性があります。これにより、飼い主にとっても経済的な利点が生まれることが考えられます。
簡単に言えば、研究データは、少なくとも多くの犬にとって穀物を含まない食事が健康的である可能性を示しています。この理由は、消化効率の向上、腸内環境の安定化、必要な食事量の減少など、多くの利点があるからです。
犬に穀物が不要である可能性は、科学的根拠に基づく考え方です。
うちの犬は三年間、穀物やペットフードを与えず、ほぼ肉食ダイエットで育てています。確かに、23k gの犬としては、ガツガツ食べず、少食にみえ、通常犬に比べ便は明らかに小さく、エネルギーに満ちており、上記の考えを証明しているかもしれません。
エンジンに例えれば、穀物は様々な不純物を含む燃料と言え、そのような燃料は、不完全燃焼を起こし、燃費効率が悪く、トルクが弱くなり、排気ガスが増えることと、似ているかもしれません。そのようなエンジンは長持ちしないでしょう。
犬の1番適した燃料は、新鮮な動物性の脂肪だと考えています。生理学的な効率から明らかであり、消化に良いと考えます。膵炎が起こるから、脂肪は控えましょう、など脂肪の忌避が一般的ですが、それは逸話的とも言われており、再考が必要でしょう。
うちの犬を散歩すると、大型犬並みの、パワフルさとトルクを感じます。その源は、いつも食べている肉の脂肪からのエネルギーなのだと、感じています。それから、体の大きさの割に、かなり重たいのです。
私は、犬には穀物はもちろんですが、炭水化物は必須ではないことも考えると、植物性の食事自体は必須ではない可能性もあると考えています。獲物自体に犬猫の必要な栄養素はすべて含まれていると思います。
でも、この考えは、ネット情報ではたいてい否定されています。ほとんどのペットフードには穀物が含まれていますから、なかなか認めるのは難しい方もいるのでしょう。「犬とオオカミは違う」「拡張型心筋症になる」などの理由で、穀物(主に豆類以外)の正当性を主張しています。実は、経済性を考えると、現在のドライフードの様な形態にするのは穀物なしではかなり難しいという理由が大きいのではないかと予想しますし、巨大産業ですから、既得権益もあるのでしょう。
参考文献
Chiofalo B, De Vita G, Lo Presti V, Cucinotta S, Gaglio G, Leone F, Di Rosa AR. Grain free diets for utility dogs during training work: Evaluation of the nutrient digestibility and faecal characteristics. Anim Nutr. 2019 Sep;5(3):297-306. doi: 10.1016/j.aninu.2019.05.001. Epub 2019 May 20. PMID: 31528733; PMCID: PMC6737487.
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