ふじみ野市
大井みどり動物病院
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2024/12/13

膵炎と食事とビタミンD

肥満は確実
 
 
 
 

 

 

ふじみ野市の大井みどり動物病院です。

 
 

あぶらっぽい食事、高脂肪食は膵炎の原因なる、というのが、一般的な獣医師の認識です。

 


ネット情報、栄養学の専門家の発言、栄養学の成書にも、その記載が見られます。

 


でも、調べてみると、あまり確固たる証拠はないようです。最近の報告では「逸話的」と表現されてるものもあり、「科学的根拠は弱い」と言えます。

 


栄養学の成書に載っているのは、55年くらい前の研究報告を参考にしているもののようですし、人でも、急性膵炎と脂肪食の関連は証明されていないようです。再考が必要でしょう。

 


人の研究も参考にすると、膵炎と関連している可能性が高いのは、肥満と中性脂肪値だと私は考えています。

 


それ以外の可能性として、ビタミンD欠乏症がもしかしたら、関与しているのではと考えています。ビタミンDは体内の炎症をコントロールし、ビタミンD不足はありとあらゆる疾患と関連していることが人ではわかっています。

 


犬のビタミンDについてわかっていることは少なく、動物病院で測定することは、ほとんどありません。稀に、血中のカルシウム値が高く、ビタミンD中毒を疑う時以外で、測定することはないでしょう。

 


人はビタミンDは日光にあたることで、生成されますが、犬猫は食事からの摂取が必須です。

 


ところで、ペットフードのビタミンDの含有量は、フードによって、かなり差があるようです。犬はほとんど体内合成できないので、ビタミンDの摂取量がダイレクトに血中濃度に反応します。研究報告をみると、健康犬で、中毒でないかと疑うほど、高い犬もいたり、逆に多くの犬が十分な血中濃度を達成していない事実があります。よって、ペットフードにビタミンDがきちんと過不足なく入っているとは、信じない方が良いかも知れません。

 


明らかな欠乏症はないが、多くの犬がビタミンDが十分でない可能性があるという事実がある一方で、ビタミンD不足と膵炎の関連が人では認められています。

 


これらを考慮すると、犬の膵炎の原因の一つに、ビタミンD不足が潜在的に存在している可能性を一応考えることはできます。

 


また、ビタミンDは脂溶性なので、脂をある程度は摂取しないと、吸収しにくいです。一般のフードの脂は本来犬が必要としている量より少ない可能性もあり、それによって、ビタミンDが吸収されにくい可能性は否定できません。

 


それから、ビタミンD不足だと、肥満になりやすくなる可能性があがります。さらに、中性脂肪値が高くなる可能性があります。

 


ビタミンDの血中濃度が低いことは、原因でなく、結果の可能性もありますが、高中性脂肪値、肥満、ビタミンD不足は互いにリンクしていると思います。ビタミンD欠乏は上流にあるかもしれませんし、人工的に添加され精製されたビタミンDがうまく機能するかはわかりません。

 


もしかしたら、ビタミンDを適切に摂取すると、膵炎の減少のほか、様々な病気が改善するかも知れません。

 


それから、植物性の食事の中で ビタミンDが含まれているのは、キノコくらいしかありません。普通、犬はキノコを食べないでしょう。獲物自体にビタミンDが豊富に含まれており、犬は大昔から、そこから摂取してきました。食べ物から十分摂取できていたので、体内で生成する必要がないのでしょう。犬がビタミンDを自分で生成できないのは、犬が肉食動物だという一つの証拠です。また、肉食動物は主にタンパク質と脂肪からエネルギーを摂取するので、犬が動物性脂肪により膵炎を起こすとは考えにくいです。

 


獲物の中のビタミンDは脂溶性で脂の中に含まれるので、犬や猫がビタミンDを摂取するには脂を食べる必要があります。昔の野生の犬は、豊富で質の良い脂とビタミンDを昔の犬は摂取していて、おそらく膵炎になることはあまりなかったのではないでしょうか。

 


うちの犬は、鳥の骨付きもも肉、豚バラ肉や鶏皮も食べます。これらは脂がかなり含まれますが、今の所は膵炎は起こしていません。おそらく、摂取カロリーの半分前後は、脂肪から得ていると思います。これは、裏付けのない基準によると、20%を遥かに超えるので、かなり高脂肪食なので、栄養士は反対するでしょう。脂肪4%の膵炎用フードがある様ですが、皮膚や被毛がカサカサになったり、神経質になったりはしないのでしょうか、その分犬に必須でない炭水化物がたくさん入っているでしょうし、脂肪を摂らないと生きていけませんし、ビタミンDが吸収しづらくなりますから、他の病気になりそうです。

 


と言っても、確かなことはわかりませんが、肥満はビタミンD濃度が低下し、膵炎になりやすくなりますから、肥満にならないことが大切です。また、摂取する脂肪が不足すると、病気になりやすくなるのは確実です。

 
 
 
例えば、ビタミンDは食べた脂肪が原料ですから、脂肪を減らすと、ビタミンD不足になり、病気になりやすくなる可能性があります。また、ビタミンD不足により肥満になるかもしれません。減量食もたいてい脂肪を制限しているので、注意が必要です。
 






【参考文献】

「ビタミン D 欠乏症の有病率は、肥満者では富栄養群に比べて 35% 高く、太りすぎ群に比べて 24% 高くなります」
Pereira-Santos, M., Costa, P., De Oliveira Assis, A., Santos, C., & Santos, D. (2015). Obesity and vitamin D deficiency: a systematic review and meta‐analysis. Obesity Reviews, 16. https://doi.org/10.1111/obr.12239.

「血清中の 25(OH)D レベルが低いと、血清中の 25(OH)D とトリグリセリド (TG) の間に負の相関関係があることなど、好ましくない脂質プロファイルと関連しています」
Jorde, R., & Grimnes, G. (2011). Vitamin D and metabolic health with special reference to the effect of vitamin D on serum lipids.. Progress in lipid research, 50 4, 303-12 . https://doi.org/10.1016/j.plipres.2011.05.001.

「多くの動物は膵炎と診断されると低脂肪食を与えられますが、これらの動物に推奨される脂肪レベルは科学的根拠に基づいていません。

肥満と品種、肥満と去勢、高脂血症(高トリグリセリド血症を含む)と肥満(German、2011)。品種、去勢状況、年齢はすべて変えることのできないリスク要因ですが、ボディコンディションスコア(太りすぎまたは肥満)と食事はコントロールできます。

ボクサー犬とボーダーコリーは膵炎のリスクが高い犬種です。

特定の薬剤はすべて膵炎のリスクを高めることが示されています。

食事中の脂肪の種類は、総脂肪含有量よりも重要な役割を果たす可能性がありますが、これが膵炎の治療に有益であるかどうかは不明です。食事中の脂肪の制限が膵臓の刺激を変えるという証拠はありませんが、膵炎の病歴が確認されている犬では食事中の脂肪を制限することが重要な推奨事項です。膵炎を患うすべての犬に低脂肪食(脂肪レベルと脂肪の種類)を与えることについて適切に調査するには、さらなる研究が必要です。

これらの臨床論文では、高脂肪食と犬の膵炎との因果関係は確認されていません。高トリグリセリド血症(原発性または続発性)を発症した犬は、膵炎(急性または慢性)を発症する潜在的リスクがあるため、逸話的な証拠から、高トリグリセリド血症を引き起こさない適切な脂肪レベルと適切な種類の脂肪を含む食事が有益であると考えられます(Watson et al, 2010 )。高脂肪食は膵外分泌液の分泌を増加させ( Haig, 1970 ; Yago et al, 1997)、ラットの壊死性膵炎の重症度を上昇させることが示されています( Czako et al, 2007)。

この研究の結果、健康な犬では、脂肪含有量、または補助的な膵臓酵素と中鎖トリグリセリド (MCT) の有無が膵臓刺激の程度 (血清中の犬トリプシン様免疫反応性 (cTLI)、犬膵リパーゼ免疫反応性 (cPLI)、およびガストリン濃度の測定により評価) に有意な影響を及ぼさないことが示されました。

健康な個体と比較して 25-(OH) D 濃度が低下していることが示されており、著者らはこれが犬の急性膵炎におけるカルシウム不均衡および死亡率と関連している可能性があると仮定している。

膵炎の(または膵炎の素因がある)犬に低脂肪食を与えることを支持する、直接的な対照群の証拠に基づく研究はありません。

急性膵炎を引き起こす正確なメカニズムは不明ですが、血流中のカイロミクロン濃度の上昇によるものと考えられています。カイロミクロンは、トリグリセリド (85~92%)、リン脂質 (6~12%)、コレステロール (1~3%)、タンパク質 (1~2%) からなるリポタンパク質粒子です。

高トリグリセリド血症誘発性膵炎の病因は十分に解明されていません ( Watson, 2015 )。膵リパーゼが膵臓内でトリグリセリドを脂肪酸に分解し、その結果として腺房が損傷するのではないかと考えられています ( Tsuang et al, 2009 )。

これらの臨床論文では、高脂肪食と犬の膵炎との因果関係は確認されていません。高トリグリセリド血症(原発性または続発性)を発症した犬は、膵炎(急性または慢性)を発症する潜在的リスクがあるため、逸話的な証拠から、高トリグリセリド血症を引き起こさない適切な脂肪レベルと適切な種類の脂肪を含む食事が有益であると考えられます(Watson et al, 2010)。

食事中の脂肪の種類は、総脂肪含有量よりも重要な役割を果たす可能性がありますが、これが膵炎の治療に有益であるかどうかは不明です。食事中の脂肪の制限が膵臓の刺激を変えるという証拠はありませんが、膵炎の病歴が確認されている犬では食事中の脂肪を制限することが重要な推奨事項です。膵炎を患うすべての犬に低脂肪食(脂肪レベルと脂肪の種類)を与えることを適切に調査するには、さらなる研究が必要です。

膵炎の(または膵炎の素因がある)犬に低脂肪食を与えることを支持する直接的な対照群の証拠に基づく研究はありません。因果関係を調べ、相関関係が実際に因果関係であるかどうかを調べるには、より多くの臨床研究が必要です。検討した論文の 1 つを含め、内科および膵炎の第一人者による逸話的証拠は、低脂肪食の使用を支持しています。膵炎は極度の腹部不快感につながる可能性があり、重症の場合は致命的であるため、裏付けとなる証拠に基づく研究がなくても、逸話的証拠の重要性が薄れることはありません。裏付けのない推奨事項では、乾燥物質ベース (DMB) で脂肪が 10% 未満 (カロリーの 17% 未満が脂肪) の食事が低脂肪であるとされることが多く、脂肪が 10 ~ 15% (カロリーの 17 ~ 23%) の食事は中程度の脂肪を含むとされています。脂肪が 20% を超える食品は高脂肪とみなされます。膵炎を患っている犬の飼い主に栄養アドバイスをする場合は、低脂肪食(DMB の脂肪含有量が 10% 未満)を推奨する必要があります。膵炎を患っている犬用に設計された獣医用食事の中には、DMB 含有量が 4% まで低いものもあります。ペットにどの食品を与えるか、または避けるべきかについて指導が必要な飼い主もいます」

Evidence surrounding feeding the canine pancreatitis patient
Nicola Ackerman
The Veterinary Nurse 2018 9:5, 240-244
https://www.theveterinarynurse.com/content/clinical/evidence-surrounding-

 
「獲物の肝臓は肉食動物にとってビタミンDの主な供給源であり、食事はこれらの動物のビタミンDの必要量を定期的に満たすことができます (How et al., 1994 ; Zafalon et al., 2020 )。」

犬のさまざまな病気と関連するビタミンD欠乏症。消化管疾患(Clarke et al., 2021 ; Gow et al., 2011)、さまざまな感染症(Clarke et al., 2021 ; Rodríguez-Cortes 2017 ; Rosa et al., 2013)、免疫介在性疾患(Mick et al., 2019)、心血管疾患(Parker et al., 2017)、さまざまな種類の腫瘍形成(Clarke et al., 2021 ; Weinder et al., 2017)、尿路疾患(Galler et al., 2012 ; Parker et al., 2017)、炎症など、幅広い疾患において、病気の犬では健康な犬よりもビタミンDの量が低かった。また、ビタミンDレベルが正常であった入院犬の生存率は有意に高かった(Jaffey et al., 2018)。さらに、アトピー性皮膚炎に対するプレドニゾロンの治療に対する反応は、ビタミンDレベルが正常であった犬の方が高かった(Kovalic et al., 2012)。「鶏が先か卵が先か」という状況は、ビタミンD欠乏症を伴う上記の疾患に当てはまります。2つの事象のどちらが原因で、どちらが結果であるかは明らかではありません(Parker et al., 2017)。

免疫系が適切に機能するためのビタミンDの最適量は、くる病を予防するために骨に必要なビタミンD量とは異なります(Selting et al.、2016)。しかし、犬のビタミンD基準値に関する報告は最小限であり、ビタミンDと疾患、年齢、品種、食事の種類などのさまざまな変数との関係に関する情報はまだ十分ではありません。

犬の血清中の25(OH)ビタミンD量は食事に依存すると推測されていますが、本研究では食事は血清中の25(OH)ビタミンD量に影響を与えませんでした。

Alizadeh K, Ahmadi S, Sarchahi AA, Mohri M. The effects of age, sex, breed, diet, reproductive status and housing condition on the amounts of 25(OH) vitamin D in the serum of healthy dogs: Reference values. Vet Med Sci. 2022 Nov;8(6):2360-2366. doi: 10.1002/vms3.943. Epub 2022 Sep 22. PMID: 36137283; PMCID: PMC9677387

 
「犬の血清 25(OH)D 濃度は大きく異なりますが、これは食事中のビタミン D 含有量の違いを反映していると考えられます。メーカーやブランドによって顕著な違いがあり、独自の配合の違いを反映している可能性があります。犬の血清 25(OH)D 濃度の測定値のばらつきと、ビタミン D が健康状態に及ぼす影響を考慮すると、食事中のビタミン D 含有量を最適化する必要があります」
Sharp CR, Selting KA, Ringold R. The effect of diet on serum 25-hydroxyvitamin D concentrations in dogs. BMC Res Notes. 2015 Sep 15;8:442. doi: 10.1186/s13104-015-1360-0. PMID: 26374201; PMCID: PMC4570747..

 
 
 
 


 


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