ふじみ野市
大井みどり動物病院
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2025/01/25

「直列」と「並列」

腫瘍の新しい考え
 
 
 
 

 

 

ふじみ野市の大井みどり動物病院です。

 
 

がん死する理由は主に転移によるものです。そのため転移をいかに防ぐかが治療の要になります。

 


そのため、腫瘍の成長や転移のメカニズムを理解することはとても重要です。その一つとして、主に従来の「直立モデル」と最近の「並列モデル」という二つの考え方があります。それぞれのモデルは、がんがどのように進行し、どのように体内で広がるのかについて異なる視点を持っています。

 


「直立モデル」は、がんがひとつのプロセスとして進行するという古典的な考え方です。最初に腫瘍が原発部位で成長し、それがリンパ節に転移し、最終的に遠隔転移を引き起こすとされています。このモデルでは、腫瘍の大きさが進行の目安として考えられ、大きな腫瘍ほど転移の可能性が高いとされています。つまり、腫瘍が進行すればするほど、がんの広がりは加速するという理論です。そのため、直立モデルに基づく治療方針では、腫瘍をできるだけ早く取り除くことが重要とされています。

 


一方、「並列モデル」では、腫瘍、リンパ節転移、そして遠隔転移がそれぞれ独立したプロセスとして進行すると考えます。このモデルによれば、がん細胞は最初から乳房やリンパ節、さらには遠隔部位で同時に成長を始めます。これらのプロセスは互いに影響を与えないため、腫瘍の大きさが必ずしも転移の進行と一致するわけではありません。並列モデルでは、がんの性質そのものが転移のリスクを決定すると考えられています。つまり、腫瘍が大きくなる過程が転移を引き起こすのではなく、がん細胞の特性が問題だとされています。

 


このように、「直立モデル」と「並列モデル」は、がんの進行の仕組みに対して全く異なる見方を提供します。これらの違いは、治療法の選択にも大きく影響します。直立モデルに基づく考え方では、腫瘍の早期発見と切除が転移を防ぐ鍵だとされます。しかし、並列モデルでは、腫瘍の切除が必ずしも転移の抑制につながらない可能性があると示唆されています。

 


例えば、「並列モデル」に基づく研究では、腫瘍がまだ小さい段階であっても、転移がすでに始まっている場合があるとされています。この場合、原発腫瘍を取り除いても、転移したがん細胞を抑えることはできません。逆に、腫瘍を切除することでがん細胞が活性化し、転移を加速させるリスクも指摘されています。これらの事実は、がん治療における腫瘍の早期切除が万能の解決策ではない可能性を示しています。

 


原発腫瘍、リンパ節転移、遠隔転移の性質がそれぞれ独立していると考えるなら、固形がんはリンパ節転移のするものとしないもの、遠隔転移をするものとしないものの、4種類に分類でき、リンパ節に転移があったも遠隔転移しないものは命に関わることがあまりないのかも知れません。また、リンパ節を含めて切除するかどうか議論があるのは、リンパ節を切除してもしなくても遠隔転移を起こすかどうかには関係がないためその有意差がでないためなのかも知れません。

 


結論として、がん治療においては、「直立モデル」だけでなく「並列モデル」の視点も取り入れることが重要です。腫瘍の早期切除が必ずしも最善策であるとは限らず、むしろ患者ごとに異なる治療戦略が求められる場合があります。がんの進行や転移の仕組みをより深く理解し、それに基づいた治療法を開発することが、これからの医療の課題と言えるでしょう。

 


転移防止のために断脚などの後遺症必至の腫瘍を大きく切除する腫瘍外科が果たして正しいのかどうか検討が必要かもしれません。リンパ節も切除することも同様です。がんの手術による重い後遺症の出現、手術によりがんが進行する可能性もあります。当院では、「並列モデル」の考え方や臨床経験、動物医療への倫理的な立場から総合的に考えた結果、手術により転移を防ぐことはほぼ不可能ではないかと考えており、原則的にその目的での手術はしない方針です。

 


参考文献

Sopik V, Narod SA. The relationship between tumour size, nodal status and distant metastases: on the origins of breast cancer. Breast Cancer Res Treat. 2018 Aug;170(3):647-656. doi: 10.1007/s10549-018-4796-9. Epub 2018 Apr 24. PMID: 29693227; PMCID: PMC6022519.

 
 
 


 


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