2025/02/02
「CUP」と「PMC」

ふじみ野市の大井みどり動物病院です。
ある経済評論家が原発不明がん(CUP:Cancer of Unknown Primary)で逝去したというニュースを目にしました。
原発不明がん(CUP)とは、がんが全身に転移しているにもかかわらず、原発巣(がんの発生した臓器)が特定できない状態を指します。通常、がんは特定の臓器で発生し、その後転移するものと考えられています。しかし、CUPの場合は原発巣が不明のまま転移が進行するため、治療の選択が難しくなります。CUPと診断された場合、転移の進行が速く、治療への反応も悪いことが多いとされています。
従来、がんの治療は原発巣を特定し、その臓器に応じた方法を選択することが基本でした。しかし、近年の研究では、原発巣を特定することが必ずしも生存期間の延長につながるわけではないことが示唆されています。
一方で、原発巣の特定ではなく、CUPの特徴である転移しやすい性質やがん細胞の分子的異常に着目する治療法もあります。具体的には、がん細胞に共通する遺伝子異常を標的とした治療薬を使用する方法です。しかし、このアプローチも臨床試験が十分ではなく、その有効性はまだ明確ではありません。
このような背景から、CUPの臨床的特徴である「転移の速さ」や「治療抵抗性」に着目し、「原発性転移がん(PMC:Primary Metastatic Cancer)」という新たな概念が提唱されています。
PMCは、「原発巣が存在するか否かにかかわらず、がんが最初から転移する能力を持っている」という点に注目しています。この視点により、CUPを単なる特殊ながんとしてではなく、転移がんの典型例として捉え、がんの進行や転移のメカニズムをより深く理解することが可能になります。
私は、多くの転移がんは「原発性転移がん(PMC)」であり、転移の仕方や速度に個体差があるだけで、転移がんの基本的な性質は共通していると考えています。
転移するがんは、生まれながらに転移能力を持ち、発生と同時に転移を始めるため、手術によって転移を防ぐことは本質的に難しいでしょう。逆に、転移しないがんは、発生時点から転移能を持たない可能性が高く、手術で根治できるがんはもともと転移しにくいタイプだったのではないかと推測されます。
これまで、人類が「原発巣から最初の転移細胞が転移する瞬間」を捉えたことはありません。これは、転移が原発とほぼ同時に起こり、その原発巣が小さすぎて検出できないからだと考えられています。したがって、すでに存在するしこりが転移しているかどうかは決まっており、手術で切除しても転移を防ぐことは難しいでしょう。もちろん例外はありますが、手術には転移を促進する要因も複数あり、そのリスクを考慮すると、手術が転移を抑える効果はかなり限定的であると考えます。
このような考えは一般的ではありませんが、私はそのように考え治療の選択肢をご家族に提示しています。
ちなみに、その経済評論家は、余命4ヶ月を宣告されても、精力的に仕事をし、年間何冊も自著を出版して、逝去の直前まで仕事をしており、それより長く生きました。前向きな気持ちにより転移細胞の増殖を抑えることができたのかもしれません。
参考文献
Kolling S, Ventre F, Geuna E, Milan M, Pisacane A, Boccaccio C, Sapino A, Montemurro F. "Metastatic Cancer of Unknown Primary" or "Primary Metastatic Cancer"? Front Oncol. 2020 Jan 17;9:1546. doi: 10.3389/fonc.2019.01546. PMID: 32010631; PMCID: PMC6978906.
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