ふじみ野市
大井みどり動物病院
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2025/02/22

「がん治療の倫理的ジレンマ」

今のうちから考える
 
 
 
 

 

 

ふじみ野市の大井みどり動物病院です。

 


抗がん剤を用いた化学療法は獣医療において普及しましたが、この治療法が動物にとって最善の選択であるかどうかについては慎重な検討が必要です。獣医師の間では診断や治療方法について活発な議論が行われていますが、参考文献の『癌に苦しむ犬の寿命を延ばすための化学療法の使用:倫理的なジレンマ』のような視点からの検討はあまり行われていないように感じます。

 


一般的に、病気の動物には可能な限りその時点での最良の治療を提供すべきだと考えられています。しかし、化学療法はしばしば強い副作用を伴い、動物にとって大きな苦痛となる場合もあります。そのため、この治療法が本当に利益をもたらすかどうかを再評価する必要があります。

 


治療の選択にあたっては、動物の健康だけでなく、飼い主の心理的・経済的負担や獣医師の責任といった多角的な要素を総合的に考慮することが重要です。例えば、飼い主が「もっと長生きしてほしい」と望んでも、がんにおいて抗がん剤治療が実際に寿命を延ばすかどうかは不確かであり、治療に伴う過度な苦痛や生活の質の低下を招くものであれば、本当にその選択が正しいのか疑問が残ります。

 


ペットは多くの飼い主にとって家族の一員であり、共に過ごす時間を大切にしたいものです。しかし、化学療法には定期的な通院や高額な治療費が伴い、副作用が現れた場合には迅速な対応が求められます。このため、飼い主の経済的・精神的負担が増し、動物を長期間病院に預けることが飼い主と動物の絆に悪影響を及ぼす可能性もあります。

 


また、化学療法により動物に激しい症状が現れた場合、飼い主自身が深刻な精神的苦痛を味わうことになります。一般的な疾患では考えられない重度の下痢や嘔吐、敗血症による死亡、または治療後の突然死といった副作用も実際に起こり得ます。事前にそのリスクが説明されていても、飼い主と動物の双方が避け難い苦痛を感じることになります。

 


また、化学療法を受けた動物から抗がん剤が排出されるため、その周囲の環境汚染やそのご家族への暴露の問題もあり、人のように厳格にそれを管理できません。また、抗がん剤が新たながんを引き起こす可能性はあまり知られておらず、それらを注意喚起することはあまり行われていませんが、今後問題になるかもしれません。

 


一方、副作用の少ない治療法を選択し、自宅で看病する方法を選ぶことで、動物と飼い主がより安心して過ごせる場合もあります。犬や猫には治療の概念がなく、希望を持ち治療を乗り越えようとする考えもないため、治療の苦痛は単なる苦痛でしかないからです。

 


獣医師はその治療が飼い主にとって最善の選択であるか慎重に検討する必要があります。一般の人々は、犬や猫にがんが見つかれば手術や化学療法で治ると考えがちですので、一度立ち止まってその是非を考えることが重要です。

 


化学療法を受ける際には、担当獣医師に効果や寿命延長の可能性、副作用、治療死のリスクについて具体的な数値や根拠を示してもらうことが重要です。「可能性にかけて」という曖昧な説明だけでは、治療の是非を再考すべきです。したがって、化学療法や大きな手術を行う獣医師には、重大な説明責任が求められます。

 


私は、人間医療における「標準医療」が必ずしも最善であるとは考えません。民間療法であっても、治療を受ける本人が選択した方法が最善であると考えます。しかし、動物にはその判断能力がなく、治療に関する概念もありません。この点が人間医療との決定的な違いであり、非常に難しい問題を引き起こします。

 


動物のがん治療、特に化学療法と外科療法に関しては、動物の苦痛や権利、飼い主との関係、獣医師の責任など、さまざまな視点から総合的に考慮し、最も適切な選択をすることが求められます。

 


健康なうちにそれらについてよく考えておくことが重要です。治療に関する自分自身の信念や考えをしっかりと持ち、その後の決定に活かすことが、動物と飼い主にとって最も良い結果を生むでしょう。

 




参考文献

Stephens, T. The Use of Chemotherapy to Prolong the Life of Dogs Suffering from Cancer: The Ethical Dilemma. Animals 2019, 9, 441. https://doi.org/10.3390/ani9070441


 
 


 


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