ふじみ野市
大井みどり動物病院
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2025/03/08

水っぽい便

分離機構
 
 
 
 

 

 

ふじみ野市の大井みどり動物病院です。

 
 

一般的に、犬や猫が「水っぽい便」をした場合、異常だと考えます。

 


しかし、草食動物(ウシ、ウサギ、ネズミ、一部の鳥など)は、消化管内で食べ物の粒子の大きさや液体を分ける機能を持っています。これは、食べた植物を効率的に消化するために必要な仕組みです。発酵しやすい小さな粒子は長く体内にとどまり、消化しにくい大きな粒子は早く排出されます。この働きは「分離機構」と呼ばれています。その結果、水っぽい便が出ることがあります。

 


うさぎの盲腸便はこの分離機構によるものであり、盲腸便が水っぽくても正常であることを獣医師は皆んな知っています。

 


一方、これまで肉食動物にはこのような仕組みはないと考えられていました。しかし、オオカミやチーターが獲物を丸ごと食べた際に、硬くてしっかりした便と、水っぽくて柔らかい便の2種類が出ることが報告されています。これは、ドッグフードを食べている一般的な飼い犬には見られません。

 


オオカミやチーターは獲物を丸ごと食べます。肉や内臓は消化しやすいですが、ひずめや骨、被毛などは消化しにくいものです。これらを腸内で分けることにより、便は水っぽくなったり硬くなったりしている可能性があります。

 


私の犬は、臨床獣医師の私の責任の下、肉食ダイエットで育てています。食事内容は一様ではなく、骨や胃袋やモツ、肝臓や心臓肉、鶏の砂肝や足先部分も与えています。その結果、便が妙に硬かったり、水っぽかったりすることがありますが、これは上記の分離機構が働いている結果だと考えています。

 


SNSで知りましたが、生肉を食べる犬が下痢をすることがあるようですが、その理由を「デトックス」と考える方がいるようです。一方で、獣医栄養学者はそれを「お腹を壊しているだけだ」とし、生肉は危険だと警告しているのをSNSで見ました。しかし、私としては、「分離機構」の可能性を第一に考えます。

 


うちの犬を見る限り、水っぽい便が出ている時でも調子が悪い様子はありません。もちろん、他に症状があれば病的な可能性がありますが、他に症状がなく、定期的であれば、分離機構という生理的反応と捉えるのが妥当です。

 


野生の犬や猫は、獲物を丸ごと食べ、時には水っぽい便や硬い便をしている可能性があります。本来の食べものを食べているため、その便は正常で、生理的と考えられます。野生では食事内容にはバリエーションがあり、便は毎日均一ではなく、さまざまな性状の便が出ていると推測できます。

 


普段と変わったものを食べると下痢を起こしますが、分離機構が絡んでいるかもしれません。

 


現在のペットフードは均一な消化性を持っており、同じフードのみを食べ続けるため、便が均一になりやすいでしょう。ずっと同じものを食べて、同じような便をすることは、自然環境の犬猫とは相違があるかもしれません。

 


分離機構が働くこと自体は正常であり、その結果として便が硬くなったり、水っぽくなったりするのは自然なことでしょう。しかし、ほとんどの獣医師は水っぽい便を異常だと判断するでしょう。また、毎日消化性の一定のペットフードを食べ、いわゆる正常な便が毎日でていることが、真に正常なのか疑問が湧きます。

 


また、生肉は何かと危険だとされていますが、汚染された生肉が問題なのであり、適切に取り扱われた生肉であれば、分離機構により便が水っぽくなる可能性があり、それは正常な反応と考えられるべきです。生肉には確かに病原菌が多く、抗生物質に耐性のある菌が多く含まれていることもありますが、その危険性がどの程度かはまだ不確定で、潜在的なリスクに過ぎないともいえます。生肉による感染症の症例報告は非常に限定的であり、それと比較すると一般的なペットフードやおやつ製品、ペット用の生肉製品からの感染事例や毒素混入による死亡例などが認められています。

 


下痢を診察したことのない獣医師はいないでしょう。しかし、その原因として分離機構による自然な反応の可能性を考える獣医師はほとんどいないのが現状でしょう。なぜなら、分離機構の可能性が周知されておらず日本ではペットフードで育てている方がほとんどだからです。

 


分離機構についてはまだ解明されていないことが多いため、断定的なことは言えませんが水っぽい便をしていても異常とは限りませんうさぎと同様、健康維持に関して何か意味があるものかもしれません。また、毎日同じ加工されたペットフードを食べ、毎日均一な形のある便をすることは犬猫本来の姿ではないのかも知れません。食事内容にはバリエーションががあったほうよいのかもしれません。

 


以上のことは、あくまで仮説ですし、骨や肉食ダイエットを啓蒙している訳ではありません。

 


確かなことは、うちの犬を肉と骨で育てていなかったら、私は分離機構に考えが及ばなかったでしょう。

 



参考文献

De Cuyper A, Clauss M, Hesta M, Cools A, Bosch G, Hendriks WH, Janssens GPJ. Are carnivore digestive separation mechanisms revealed on structure-rich diets?: Faecal inconsistency in dogs (Canis familiaris) fed day old chicks. PLoS One. 2018 Feb 12;13(2):e0192741. doi: 10.1371/journal.pone.0192741. PMID: 29432482; PMCID: PMC5809083.

 
 


 


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