ふじみ野市
大井みどり動物病院
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2025/04/12

塩分制限と糖質

その相互作用
 
 
 
 

 

 

ふじみ野市の大井みどり動物病院です。

 
 

「減塩の日本食」は一見、健康に良い選択肢のように思われますが、必ずしもそうとは限りません。

 


減塩によって高血圧が改善することもありますが、過度な塩分制限は体に別の問題を引き起こす可能性があります。生理学的に、塩分が不足すると体は危機と判断し、交感神経を活性化させて血圧を上げようとします。これは「臨戦体制」に似た状態で、血糖値の上昇を伴い、長期的には体に負担をかけることになります。さらに、塩分不足は血液量の減少やだるさ、インスリン抵抗性の悪化を引き起こすこともあります。

 


また、日本食は米を主食とするため、糖質が多く、これが血糖値の上昇を招き、体にストレスを与える原因になります。高血糖と高インスリンの状態は、減塩時の交感神経活性化と同様の反応を引き起こし、最終的には高血圧や慢性疾患のリスクを高める可能性があります。

 


さらに、インスリン濃度が高い状態は腎臓でのナトリウム再吸収を促進し、血液量を増加させます。これにより、糖質が多い食事が高血圧の原因となることも考えられます。

 


つまり、過度な塩分制限と糖質の過剰摂取は、血圧を上げるなど、ダブルで健康に悪影響を与える可能性があります。「減塩の日本食」がこれに該当することもあり、かえって高血圧などを引き起こす恐れがあります。

 


犬に関しても、減塩の心臓病用療養食が市販されていますが、これが犬に同様のストレス反応を引き起こしているかもしれません。しかし、犬にとって最適な塩分量についてはほとんどわかっていないため、断定することはできません。

 


それにもかかわらず、犬の弁膜症治療ガイドラインでは、マイルドな塩分制限が推奨されています。ただし、「マイルド」の意味は不明確であり、その根拠となる文献もはっきりしません。このように、ガイドラインがあっても、実際に役立つ指針が示されていない点に疑問があります。

 


犬や猫の本来の食事は獲物が主体であり、生理食塩水程度の塩分が適切だと考えられます。糖質はほぼ無視できる量で、最も体に合った食事はわずかな塩分とほぼゼロの糖質である可能性があります。これは、人間の食事と比較して、減塩かつ低糖質であると言えます。

 


一方、加工された高糖質なペットフードでは、適切な塩分量の設定が難しく、糖質の多さに応じて塩分を増やさなければ、犬や猫が調子を崩す可能性もあります。糖質を積極的に与える理由はないため、犬や猫には低糖質の食事を提供すべきです。

 


したがって、心臓病用の減塩で糖質が多い療養食を与えることが、逆に犬や猫の健康に悪影響を与える可能性を考慮すべきです。

 


現在の日本では、多くの人が過剰に糖質を摂取しているように思います。米は約1万年前に登場し、それに対する私たちの代謝はまだ完全には適応していないかもしれません。人間にとって本当に適した食べ物であれば、微生物的に問題がなければ生で食べることができるはずで、大きく血糖値を上げるような食べ物は本来の食べ物ではないと考えています。

 


現在、米の価格が高騰している中で、この機会に米の摂取量を減らしてみることは、体調改善に繋がる可能性があります。血糖値の急上昇を避けることは、確実に体に良い影響を与えるでしょう。カロリーを過剰に制限するのではなく、米の量を減らし、その代わりに肉や魚を増やすと良いかもしれません。

 


我が家の犬は肉食ダイエットを実践しており、糖質による血糖値の変動はほとんどありません。時折、塩味のある食材を与えますが、基本的に塩は追加していません。今まで、塩分不足と考えられる不調は見られません。

 


ちなみに、人では糖質制限ダイエットで不調を訴える方がいますが、塩分不足かカロリー不足、あるいは「ケトフルエンザ」という体の馴化過程が原因と考えられます。

 


私の現在の考えでは、犬や猫の糖質の至適量はゼロに近く、この状況下であれば、生理食塩水程度の塩分(涙の味くらい)が最適だと考えています。それ以上の塩分を摂取しても、腎臓がナトリウムを効率よく排泄するため、大きな問題は生じにくいと考えています。塩をたくさん摂取しても、血液量が増える前に腎臓が適切にナトリウムを排泄します。その能力は、犬も猫も人間も非常に高いと考えています。生理学的に血糖値が上昇するほどさまざまな悪影響があるので、これを回避することが良いと考えています。

 


要するに、糖質を適切に減らすことで、塩分量を気にする必要はあまりないと考えています。

 
 



参考文献



DiNicolantonio JJ, O’Keefe JH. Sodium restriction and insulin resistance: A review of 23 clinical trials. J. insul. resist. 2023;6(1), a78. https://doi.org/10.4102/jir.v6i1.78

 


 


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