ふじみ野市
大井みどり動物病院
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10時〜

2025/06/22

肉でお腹を壊すなら

タンパク質不足かもしれません
 
 
 
 

 

 
 
埼玉県ふじみ野市の大井みどり動物病院です。
 
 
 
人では現在、タンパク質を多く摂取することが流行しているようです。実際、コンビニの書籍コーナーにはタンパク質を意識したレシピ本が並んでいるのを見かけますので、多くの人が関心を寄せているのでしょう。
 
 
タンパク質は体の構成材料です。不足すると筋肉量が減り、病気にかかりやすくなります。肌がカサカサになったり、体力が落ちたりすることもあるでしょう。骨も同様で、骨はカルシウムだけでなく意外にコラーゲンも多く含んでおり、そのコラーゲンは摂取したタンパク質から作られます。そのため、タンパク質が不足すると骨まで弱くなる可能性があります。
 
 
したがって、自然な食材から意識的にタンパク質を摂ることは、健康維持に役立つと考えられます。肉、魚、卵、大豆などを普段からしっかりと食べることは、健康維持に寄与するでしょう。
 
 
ただし、普段あまりこれらを食べていない人が、急に大量に摂るとお腹を壊すことがあります。興味深いのは、その一因が「タンパク質不足による消化機能の低下」であると考えられている点です。
 
 
具体的には、胃酸、胆汁、膵液などの消化液の分泌が不十分だったり、胃腸の動きが鈍くなっていたりすることが影響していると考えられています。
 
 
これは、使っていない筋肉を急に動かすと痛めやすいのと似ています。突然の過度な筋トレで体を壊したり、普段階段を使っていない人が階段で息切れしたりするのと同じような現象でしょう。
 
 
少しずつ適切な量を食べて、徐々に体を慣らしていくことが大切なようです。この本では「気分が悪くならない程度にたくさん食べましょう」と書かれています。
 
 
これは犬にも当てはまるかもしれません。普段肉を食べていない犬に急に肉を与えると、下痢をすることがあります。獣医師の多くは、その原因を肉の脂や微生物、あるいは急な食事の変化と考えますが、実はそれだけではないかもしれません。
 
 
タンパク質が少ないフードを長期間与えられてきた結果、消化液が十分に作られず、消化器が「怠けて」しまっていたために対応できなかった可能性があります。
 
 
つまり、健康そうに見える犬でも、実は「栄養不足による消化機能の低下」が起きているケースがあり得るのです。
 
 
また、胆汁についても、普段必要とされなければ分泌が減り、胆のう内に停滞して固まりやすくなるかもしれません。実際、多くの犬に胆泥症が見られますが、その原因はよくわかっていません。もしかすると、タンパク質や脂質の不足が関係しているのかもしれません。
 
 
そういえば、先週も犬の骨折(50センチ程度の高さから飛び降りただけで骨折)の診察がありましたし、転移の有無を確認するための検査中にも、胆泥が見つかりました。これらにはタンパク質や脂肪の不足が一因となっている可能性はあるでしょう。
 
 
AAFCO(米国飼料検査官協会)は、犬のタンパク質や脂肪の「必要量」を定めていますが、それはあくまで最低限の量です。最低限と最適量は別物です。また、両者とも摂取量の上限は設定されていないため、食べ過ぎを過度に心配する必要はないかもしれません。
 
 
獣医師や栄養士の中には、微生物学的な観点から「生肉は危険で下痢を起こすから与えない方がよい」と主張する人もいます。しかし、実は栄養不足による消化力の低下が原因の可能性もあるのです。
 
 
うちの犬は、肉と骨を中心とした食事をしています。骨も太く、筋肉も発達しており、体つきもしっかりしています。消化器も一般的な犬より鍛えられているでしょう。
 
 
ただ、これはいわゆるボディビルダーのようにトレーニングで鍛えた消化器ではなく、本来の犬のあるべき姿だと私は思っています。犬は肉食性の動物ですから、本来なら肉を消化できないはずがありません。
 
 
この本の著者である栄養士自身も、肉や魚などからタンパク質をしっかり摂取することで体調が改善されたそうです。体だけでなく、精神面にも良い影響があったようです。これはタンパク質不足が解消されて「本来の状態」に戻ったためでしょう。
 
 
犬でも同じことが言えるでしょう。タンパク質が充足されれば、健康につながることは間違いありません。多くの疾患を予防し、疲れにくくなり、精神も安定すれば、それは犬の幸福にもつながるはずです。
 
 
要するに、「肉を食べて下痢をしたら、栄養不足が背景にあるかもしれない」のです。ただし、99%の獣医師はこの可能性を考慮せず、「肉なんか与えるからだ」と考えるでしょう。
 
 
多量のタンパク質摂取は、栄養不足によって機能が低下した消化器にはかなりの負担となり、膵臓などのさまざまな数値に異常を引き起こす可能性もあるでしょう。それが犬の膵炎の一因となっている可能性も考えられます。
 
 
その下痢は肉そのものが原因ではなく、最上流の原因はタンパク質不足かもしれないのです。そもそも、肉食性の強い犬や猫が、微生物学的に安全な肉で体調を崩すとすれば、それは生活習慣や身体の状態が至適ではないと言えるでしょう。
 
 
とはいえ、これはあくまでも仮説であり、このような一般書の内容は玉石混交です。しかし、タンパク質不足に関しては、この栄養士の見解に私は賛同しており、さまざまなことを考慮した結果、一般的なペットフードを食べている多くの犬や猫、日本人の多くは、至適量には達していないと考えています。
 
 
 

 
参考図書
 
金津里佳(2023)『9割が間違っている「たんぱく質」の摂り方』青春出版社(青春新書インテリジェンス PI 669)
 


 


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