2025/07/12
トリプルワーミー

埼玉県ふじみ野市の大井みどり動物病院です。
「トリプルワーミー(Triple Whammy)」とは、RAAS(レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系)阻害薬・利尿薬・NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の3剤を併用することで、腎臓に大きな負担がかかり、急性腎障害(AKI)のリスクが高まる状態を指します。
この用語は主にヒト医療の分野で使われており、獣医学では一般的ではありません。
これら3種の薬剤は動物病院でも日常的に使用されており、ほとんどの施設に常備されています。
いわば「腎臓に非常に負担のかかる三つの組み合わせ」であり、特に高齢の犬や猫、あるいは既に腎機能が低下している動物ではそのリスクがより高くなります。
RAAS阻害薬と利尿薬は、犬の心臓病治療でよく併用される薬剤です。これに対し、NSAIDsは主に関節や腰の痛みに対して使われる鎮痛薬で、さまざまな種類があります。
NSAIDsは外科的な痛みには効果的ですが、どうしても必要なケースは限られており、使用は数日程度にとどめるのが望ましいと考えています。腎機能が低下している動物には基本的に使用せず、手術後の痛み緩和などで当日のみに限定して投与することが多いです。副作用の発生率が高いため、使用には特に注意が必要です。この点で、NSAIDsは3剤の中でもその原因薬と言えるでしょう。
一方で、RAAS阻害薬と利尿薬によってAKIを直接引き起こす可能性は比較的低いとされており、血液量の減少によって一時的に腎数値が上昇することはありますが、生活の質が保たれていることが多く、心疾患治療におけるメリットは大きいと考えています。これらは私にとって使い慣れた薬です。
私はトリプルワーミーのような薬剤併用は一切行いません。臨床経験から、腎臓に過度な負担がかかり、腎機能が低下するリスクが高いと判断しているからです。特にNSAIDsの副作用リスクは大きいと考えています。
人においても、NSAIDsは副作用が出やすい薬剤として知られており、その使用には慎重さが求められます。
心疾患で日常的に薬を服用している動物において、例えば足の痛みなどで動物病院を受診し、NSAIDsが追加で処方される場合には特に注意が必要です。また、関節痛やがんの痛みに対してNSAIDsを常用する場合も、腎機能のモニタリングが不可欠です。
特に猫では、NSAIDsによる腎障害のリスクが犬よりも高い傾向があります。NSAIDsを長期に使用することで得られるメリットが、リスクを上回るケースは非常に稀だと考えています。そのため、私はNSAIDsを長期間処方することはほとんどありません。
NSAIDsしか選択肢がないという状況はほとんどなく、この薬で「救命できた」と明確に言える例も、私の経験上ではありません。
ちなみに、心疾患でRAAS阻害薬と利尿薬を常用している動物が、別の疾患で体調を崩した場合、NSAIDsを使用しなくても、薬が効きすぎて低血圧やAKIを引き起こす可能性があるため注意が必要です。
人においても、NSAIDsを安易に使わない方が良いと考えます。頭痛薬など、イブやバファリンなどの市販薬にもNSAIDsは数多くあります。
また、人用のNSAIDsを動物が誤って摂取すると非常に危険ですので、家庭内での取り扱いには十分ご注意ください。
要するに、NSAIDsは、他の薬以上に、適応をよく考え、副作用に注意が必要です。
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