2025/11/01
足がくの字に曲がる
埼玉県ふじみ野市の大井みどり動物病院です。
4ヶ月齢のトイ・プードルさんが、左前肢の骨折により骨がくの字に曲がってしまい、慌てて当院に来院されました。
ご家族は冷や汗を流し困惑されていましたが、私にとってはよくあるケースであり、この様子を見た瞬間におおよその経過を予測することができました。
ギプス治療によりレントゲン上ではわずかな変形が残るものの、1ヶ月ほどで通常の生活に戻り、その後は足の診察も不要になるだろうと判断しました。
ここでは、このケースに対して当院でどのように対応したか、その概要をご説明します。
骨折直後は強い痛みと不安があるため、まず鎮静剤を投与し、軽い麻酔状態にしました。鎮静剤を使用しない病院も多いようですが、使用しない理由はありません。苦痛を最小限にし、迅速に検査・処置を行うことが基本ですので、当院ではこのような場合、鎮静剤の使用を必須としています。
ウトウトした状態になったところでレントゲン撮影を行い、骨折の状況を確認します。さらに、骨折部位の毛刈りを丁寧に行い、骨が皮膚を突き破っていないかも確認しました。
幸いにも骨は露出していませんでしたが、骨は完全に折れ、約90度に曲がっていました。
このような場合、教科書的には手術で金属プレートを装着するのが一般的ですが、当院ではこの部位の骨折に対して手術を行うことはもう何年もありません。なぜなら、ギプス固定で十分治るからです。
このプードルさんにはまず、特殊なギプスを装着しました。骨折直後は骨が変形しやすく、一定の方向に力がかかりやすいため、その変形が生じないよう固定を行いました。この状態で3日間入院してもらい、経過を観察します。
3日後に再度レントゲンを撮影し、樹脂製ギプスに交換して再固定を行いました。その後退院し、ギプスを装着したまま自宅で1週間過ごします。
1週間後に再来院してもらい、麻酔下でギプスを外してレントゲン検査を行い、再度ギプス包帯を装着します。
この工程を1週間おきに、合計3回ほど繰り返します。
今回のトイ・プードルさんは非常に活発で、自宅ではジャンプしたり激しく動き回ったりするため、最後のギプスを外した直後の期間が少し心配でした。そこで、ギプス除去後は念のため1週間入院し、ケージ内で安静に過ごしてもらいました。
骨は順調に治癒し、現在では激しい運動も問題ありません。骨は健常時より太くなり、再骨折のリスクはほぼゼロです。
一方、金属プレートによる手術ではこうはいきません。プレート除去の再手術が必要になることもあり、またギプス治療のように骨が太くなる治癒過程にはなりません。
なぜなら、手術によって骨折の自然治癒反応が大きく阻害されるためです。
プレートは体にとって異物です。そのため、後にプレートを除去する場合には再骨折のリスクがあり、除去しない場合でも骨がやせ細るおそれがあります。手術のたびに痛みを伴い、再骨折すれば犬にもご家族にも大きな負担となります。
プレート固定による手術が成功しても、数か月から1年ほどは安心できず、定期的な通院が必要です。
一方、当院のようにギプスで治療すれば、骨折時の痛みだけで済み、手術は全く必要ありません。実績としても、ギプス固定による治癒率は100%、再骨折率はこれまでのところ0%です。
整形外科の専門家の中には、ギプス固定は不安定でうまく治らないと考える方もいます。また、骨の変形という後遺症を指摘されることもあります。確かに変形は残りますが、日常生活への支障はほとんどなく、機能的には100%回復できると私は経験的に考えています。
つまり、骨の変形自体はデメリットであっても、生活上の支障は全くないという判断です。
とはいえ、できる限り変形を防ぎたいという思いはあります。しかし、そもそもギプスで治す方法は教科書では否定されており、知見が少ないのが現状です。そこで私は、日々の症例から学び、より良い結果を得るために改良を重ねています。
総じて言えば、現在の一般的な動物病院の現場においては、多くの前腕骨折に対してギプスによる治療が最良の方法であると考えています。
骨折端が大きくずれているケースや、老犬・両前肢同時骨折の症例もありましたが、すべて治癒しています。
犬や猫の骨の治癒力は、一般に考えられているよりはるかに高いのです。そして、医療行為がその治癒力を損なう可能性があることを、私たち獣医師は常に意識する必要があります。
当院ではこのような方針で治療を行っていますが、すべての動物病院で同じとは限りません。骨折の際には、必ず担当獣医師とよく相談のうえで治療法を選択していただきたいと思います。
最後に付け加えるなら、もしこれが私自身の愛犬だったとしても、まったく同じ治療を行います。
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