2025/11/10
嘘ばかり
埼玉県ふじみ野市の大井みどり動物病院です。
ノーベル医学・生理学賞を受賞した本庶佑氏は以下のように発言しています。
「ネイチャーやサイエンスに出ているものの9割は嘘で、10年経ったら残って1割と語り、自分の目で確かめることの大切さを説いた」
吉川慧. 『ネイチャー誌、サイエンス誌の9割は嘘』ノーベル賞の本庶佑氏は説く、常識を疑う大切さを BuzzFeed Japan, 2021年5月24日. https://www.buzzfeed.com/jp/keiyoshikawa/honjo-kyoto
世界的な権威のある学術誌が本当にそうなら、驚くべきことです。
研究の資金提供者に忖度したり、研究者の偏見から、都合の良い結果だけ選んでいるからかもしれません。論文は業績になりますし、新薬の承認は製薬会社に莫大な利益を与えることがありますので、様々な強い思惑があるのは想像できます。また、思惑と反する研究結果はお蔵入りになることもあるでしょう。
さらに、医療の再現性について否定的な論文もいくつかあります。臨床医学もあまりあてにはならないかもしれません。
医学などの科学情報は、話半分に聞いて、自分で確かめることが大事なのかもしれません。
そういえば、獣医学の学会にいくと、製薬などの企業の無料のランチョンセミナーがあります。提供されたお弁当やお茶を食しながらセミナーを聴講します。返報性の原理(お返ししたい心理)を利用し、新薬を宣伝しているのでしょう。そのようなセミナーには明らかな利益相反があるといえ、よい効果が過大にクローズアップされ副作用のことにはあまり触れないようにしたりと、中立ではない可能性が高いです。そのセミナーは簡単に言えばCMですが、私がそうであったように若い獣医師は素直に信じてしまうでしょう。このような無料なセミナーも話半分位の気持ちで聴くのがよいでしょう。
驚くべきことですが、人の研究では明らかに「医師の処方スイッチは弁当でONになる」傾向があるのです。
臨床現場の獣医師が、確実に信じることができるのは、現場での治療反応だと考えます。私はその治療反応を重視しています。
その治療反応を見ながら、自分で考えることが重要だと考えています。また、生理学や解剖学の基礎的な学問はごまかすことが難しく、法則のようなものに近いといえます。最新の知見に眼を向けるより、基礎的な学問を学び直すことの方が、真実につながることが多いかもしれません。
私達は日頃多くの情報を得ていますが、無料の情報はまずCMだったり、だれかが利益を得るように仕向けた情報だと思っていたほうがよいでしょう。あるいは情報自体は正しくても偏った伝え方をしている場合もあります。かといって、有料の情報が正しいともかぎりません。実際の体験を信じるにしても、信じたいものしか見ないというバイアスもかかりますから、難しいものです。AIに聞いても、AIが間違った情報をもとに判断していれば、正しくないでしょう。また、白黒はっきりいえることは少なく、大抵がグレーであることも重要事項かもしれません。
かなり穿った見方をすれば、本庶先生の発明も、ノーベル賞を受賞したカリコ博士のmRNAを改変してタンパク質を作らせる方法も、廃れてなくなるかもしれません。
また、私たち動物病院の獣医師も今やっている医療が本当に正しいかはわかりません。
一つ言えるのは「世の中の情報は嘘ばかりだ」と、考えるほうが、有利であり、それを疑い自ら考えることが、圧倒的に有意義であるのは間違いないでしょう。でも、疑心暗鬼はふつうあまり楽しくありませんから、逆に、自分で考えないで、素直に何でも信じてしまうこともそれはそれで幸せなのかもしれません。
参考文献
多くの医学論文は再現性に乏しく、誤った結論や誇張された効果が報告されることがある。特に、統計的有意性への過度な依存や、研究デザインの不備、データの透明性不足が問題視されている (Ioannidis et al., 2018; Jarvis & Williams, 2016; Grimes, 2023; Wallach et al., 2018; Eisner, 2017; Iqbal et al., 2016)。
新規性や肯定的な結果が重視される出版文化により、否定的・中立的な結果や再現研究が十分に発表されない傾向がある (Grimes, 2023; Iqbal et al., 2016)。
査読のない低品質な論文や、著者のために論文を「製造」するペーパーミルの存在が、医学知識の信頼性を著しく損なっている (Van Loon & Van Loon, 2023; Mainous, 2025; Heen & Vogt, 2024)。
研究プロトコルと実際の報告内容の不一致や、主要アウトカムの変更・省略が頻繁に見られる (Ioannidis et al., 2018; Li et al., 2017)。
「パブリッシュ・オア・ペリッシュ」の風潮が、研究不正や著者資格の不正取得を助長している (Kearney et al., 2024; Heen & Vogt, 2024)。
データやプロトコルの公開、再現研究の推進、バイアス低減のための方法論的改善が提案されている (Ioannidis et al., 2018; Jarvis & Williams, 2016; Wallach et al., 2018; Iqbal et al., 2016; Li et al., 2017)。
AIや専門家による査読強化、プレダトリー・ジャーナル対策、出版倫理の徹底が求められている (Mainous, 2025; Heen & Vogt, 2024)。
医学部教育における研究方法論や批判的文献評価の強化が推奨されている (Ioannidis et al., 2018; Hess & Abd-Elsayed, 2019; Eisner, 2017)。
「医師が製薬会社からプロモーション目的の食事(平均20ドル未満)を1回受け取るだけで、対象薬剤の処方率が有意に上昇した。例えば、ロスバスタチン(スタチン系)ではオッズ比1.18、ネビボロール(β遮断薬)では1.70、オルメサルタン(ACE阻害薬/ARB)では1.52、デスベンラファキシン(抗うつ薬)では2.18であった。」
「追加の食事や20ドルを超える食事を受け取ると、さらに処方率が上昇した。」
「業界提供の食事を受け取った医師は、プロモートされたブランド薬の処方率が有意に高かった。」
Pharmaceutical Industry-Sponsored Meals and Physician Prescribing Patterns for Medicare Beneficiaries. JAMA Intern Med. 2016 Aug 1;176(8):1114-22.
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