ふじみ野市
大井みどり動物病院

2025/11/29

トトロの食性

「どんぐりを食べるかどうか」「食性の違い=雑食性の程度の違い」
 
 
 
 
 

 

 
埼玉県ふじみ野市の大井みどり動物病院です。
 
 
トトロの食性を歯の形態から「雑食性が強い」と判断した方に対し、宮崎駿監督は感銘されていましたが(採用面接の時で、即採用になったようです)、トトロだけでなく、『となりのトトロ』に登場するさつきとメイ、ネコバス、ヤギ、そして犬についても、それぞれの食性を多角的に考察してみました。
 
 
まず、トトロについてですが、映画の中でトトロがどんぐりを食べるシーンが描かれており、これは雑食性を示唆しています。さらに、トトロの大きな体と丸みを帯びた体型は、一般的に雑食動物によく見られる特徴です。雑食性の動物は、植物を摂取するために消化器官が発達しており、比較的大きな大腸を持つことが多いです。したがって、トトロの体型は、食物を発酵させて消化する能力を有する「発酵槽のような大腸」を持つことを示唆しており、トトロは雑食性が強い動物であると考えられます。
 
 
次に、さつきとメイは人間であり、一般的に雑食動物と見なされています。しかし、あまり知られていませんが、人間の消化管は犬や猫のように単純な構造をしており、他の動物種の胃腸と比較すると、かなり肉食動物に近いのです。人類は長い歴史の中で動物性の食事を多く摂取することで脳が発達したとも言われており、一般的に考えられているよりも肉食に偏っていたという説もあります。
 
 
おそらく、トトロの体に対する大腸の大きさの比率と、さつきやメイのそれとでは、かなりの違いがあると考えられます。そのため彼女たちはトトロよりスリムであり、トトロの方が遥かに雑食性は強いと予想されます。
 
 
ネコバスは猫の一種と考えると、完全な肉食動物と言えます。鋭い歯と強力な狩猟本能から、肉食動物の特徴がうかがえます。ネコバスのスリムで筋肉質な体型や運動能力が高いことも肉食性を強く示唆しています。肉を中心に摂取するため、大腸の発達が必要なく、消化器官は比較的簡略化されており、その結果としてスリムな体型を維持しているのです。
 
 
ちなみに、映画の主要な登場人物ではありませんが、犬もまた、肉食性と雑食性の特徴を持っています。犬の体型は比較的スリムで筋肉質ですが、植物をある程度消化する能力も持つため、雑食性があります。しかし、犬の消化器官は単純で、腸が短く、大腸が小さいことから肉を効率的に消化できます。大腸が発達していないため犬もスリムな体型をしていますが、哺乳類全体を考えれば、完全な肉食動物ではないものの、猫に近似した肉食動物です。また、犬の歯はトトロより猫に近いです。
 
 
以上の考察から、肉食性の高い順に並べると、ネコバスが最も強く、その次に犬、さつきとメイ、そしてトトロが最も肉食性が弱いキャラクターとなります。
 
 
食性は、トトロの食事の「どんぐりを食べるかどうか」という観点からも推測できます。通常、犬、猫、はどんぐりを食べませんし、生では消化できません。人は縄文時代は食べていたようです。よって、どんぐりを食べない動物は雑食性が弱いと言えます。むしろ、犬や猫にとって、どんぐりは腸閉塞を起こす可能性があり、危険な食物です。この点からも、どんぐりは肉食動物であるほど不向きな食物だと言えます。
 
 
一方で、どんぐりを食べる動物としては、リス、クマ、イノシシが挙げられます。これらの動物は普段からどんぐりを食べ、体型はトトロに似た下半身がずんぐりした体型で、雑食性が強いと言えます。
 
 
また、脇役で登場するヤギについては、完全な草食動物であり、どんぐりをほとんど食べないでしょう。ヤギは、トトロの歯と似た形状をしていますが、牙はなく、完全な草食動物に近い特徴を持っています。特に、奥歯(臼歯)が平坦なすり鉢状である点や、草を刈るために下顎の切歯が発達している点がトトロの歯と類似しています。
 
 
このように、普段どんぐりを食べる哺乳類は真の雑食動物である可能性が高いと言えます。トトロだけが真の雑食動物であり、ヤギは真の草食動物、ネコバス、犬、さつきとメイはかなり雑食性が低いカテゴリーに入るとも言えます。
 
 
牙のあるなしも食性の判断に有効です。牙がないと、草食性が強い傾向があります。トトロは牙がなく、歯の多くがすり鉢状なので、草食よりの雑食動物と言えるかもしれません。
 
 
ところで、トトロは牙がなく、多くの歯がすり鉢状です。そのような動物はいますが、トトロのように顎が短い動物はおそらく現存しません。つまり、トトロには牙があった方が雑食動物としては自然であり、牙がないことは矛盾があると言えます。
 
 
トトロは架空の動物なので、あえてその矛盾を採用したのかもしれませんが、もしかしたら、緻密さを追求する巨匠でもそこまで詳細な解剖学的整合性までは考えが至らなかったのかもしれません。あるいはトトロに牙があることは穏やかな性格と合致しないからかもしれません。
 
 
結論として、トトロは架空のキャラクターであるため、現実の動物のように厳密に分類するのは難しいですが、映画内での描写から推測するに、トトロは雑食性が強い動物であると考えることができます。
 
 
したがって、例外はありますが、真の雑食動物というのはトトロみたいな動物であり、どんぐりを食べられます。どんぐりを食べない、犬や猫はごくわずかな雑食性しかないと言えます。人は雑食動物と言われていますが、あまり、どんぐりを食べませんので、肉食よりの雑食動物でしょう。
 
 
考えてみると生粋の肉食動物の猫でさえ、雑食性がありますから、食性は雑食性の度合い(連続的な尺度)で食性を分類することが有効であると考えましたが、この主張やその根拠は、すでに私が思いつく前に、Reuter et al. (2023)など複数の文献で示されていました。
 
 
普段どんぐりを食べるかどうかはその度合を測るひとつの指標であり、大雑把な目安になるでしょう。そして、「食性の違い=雑食性の程度の違い」なのです。
 
 
 
「食性の違い=雑食性の程度の違い」は非常に重要なことですが、獣医栄養学では記されていません。やはり、肉食、雑食、草食の3種類で分類する方法、または、「犬は雑食動物、猫は肉食動物」は適切ではないでしょう。
 
 
 
参考文献

Reuter, D. M., Hopkins, S., & Price, S. (2023). What is a mammalian omnivore? Insights into terrestrial mammalian diet diversity, body mass and evolution. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences.
「雑食動物を一つのカテゴリーにまとめるのではなく、その生態的多様性と進化的影響を考慮すべきである。」


 


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