ふじみ野市
大井みどり動物病院

2026/1/2

混ぜてはダメ

皮下輸液と薬剤
 
 
 
 
 

 

埼玉県ふじみ野市の大井みどり動物病院です。
 
 
 
動物病院で皮下輸液を行わない病院は存在しないでしょう。
 
 
皮下輸液とは主に首の後ろのところに輸液剤をある程度の量注入することです。目的は脱水時などの時の水分(細胞外液)の補充です。
 
 
この時、制吐薬(プリンペランなど)、胃酸抑制薬(ファモチジン)など注射薬剤を混ぜて投与することが、かなり多くの動物病院で行われているようです。(一方ステロイド剤のプレドニゾロンや制吐剤のマロピタントは普通に皮下注射する傾向があるようです)
 
 
私はこのようなやり方を行いませんが、多くの獣医師が行っていることに少々驚きました。実はこの方法は適切ではありません。
 
 
これが不適切であることは、輸液の性質や浸透圧の原則など、基本的な理屈を少し考えてみれば、比較的容易に理解できるものです。
 
 
皮下輸液は数百mLの等張液を皮膚の下に注入し、数時間かけて、ゆっくり吸収させることで水分補給を目的としています。
 
 
一方、一般的に注射薬剤は少量で速やかに血中に入り、治療に必要な濃度を保つよう設計されています。
 
 
大量の輸液に混ぜると薬は極端に希釈され、皮下組織からの吸収が遅く不均一になるため、血中濃度が十分に上がらず、期待した効果が得られにくくなります。
 
 
病院によってはグルコースやカリウムなども混ぜて投与する場合もあるようです。これらを混ぜると、輸液剤の浸透圧が上昇し、刺激の原因になったり、吸収が速やかに行われない可能性があります。
 
 
つまり、皮下輸液剤に薬剤を混ぜることは適切ではないのです。ちなみに、輸液剤にはさまざまな種類があり、皮下輸液では等張液という性質のものしか使用できません。
 
 
等張液は、目に入れても滲みません。この等張液に混ぜものをすると等張液でなくなる場合が多く、滲みるのです。
 
 
そもそも、それぞれの注射薬には投与法が定められています。添付書の指示通り、皮下注射する薬剤は正しい方法で投与しなければなりません。輸液に混ぜて皮下注射して投与を指示している薬はゼロです。
(静脈内に薬剤を投与するために、薬剤を輸液に溶かして投与することはあります)
 
 
国際ガイドラインでも、こうした添加薬は組織刺激や吸収不良のリスクから避けるべきとされています。それにもかかわらず、日本では有数の動物病院や専門医が所属する施設を含め、この慣習がかなり一般的であるのが現状のようなのです。
 
 
薬物動態学の基礎を振り返れば、その非合理性は明らかであり、最新の知見を確認すればすぐに改善できるはずです。
 
 
薬によっては、析出物が出現する場合がありますし、水溶性ビタミン剤なら問題ないと考える獣医師もいるかもしれませんが、これも不適切です。
 
 
おそらく、皮下輸液剤に他の注射薬を混ぜる医学的な正当性はどんな場合にもありません。
 
 
言い換えれば、皮下輸液では「等張液をそのまま」でしか投与できません。
 
 
不適切な方法の習慣化は、長年の経験則や利便性を優先する傾向、国際ガイドラインの浸透が十分でないことなどが背景にあるのでしょう。また、ほとんど問題が生じてないように見えるのは、主に薬効が効かなくなる方向に作用するため、副作用が露見されないのでしょう。
 
 
また、皮下注射と静脈内点滴両方のやり方が現場で融合し、それぞれの動物病院の現場で、独自のやり方が生まれてしまったのかもしれません。繰り返し行っていくことで、それが正しいと考えられたのでしょう。
 
 
このような医療は慣習的医療と言え、疑問が生じず、当たり前のこととして受け入れられているのでしょう。この方法は、今は傷に消毒はしなくなったように、徐々に消えていくでしょう。
 
 
臨床現場の獣医師でないと今回の話のご理解は難しいとは思いますが、日本の獣医療の質向上のために、この場を借りて提言させていただきました。
 
 
結局、混ぜていいのは他の種類の皮下輸液剤だけです。ただ、原則そのような状況はありません。
 
 
したがって、皮下輸液中の同じ管から薬剤を投入したり、輸液剤が黄色の場合は、その時点で適切ではないのです。混ぜてはダメなのです。
 



参考文献
 
2024 AAHA Fluid Therapy Guidelines for Dogs and Cats(American Animal Hospital Association, 2024) 
「皮下輸液は脱水補正に有効だが、添加物(薬剤、ビタミンなど)の使用は組織刺激、不快感、吸収不良、薬効低下のリスクを考慮し、メーカー指示通りの別投与を推奨する方向。(本文および関連セクションより要約)」
 
Tanya's Comprehensive Guide to Feline Chronic Kidney Disease(Helen Fitzsimons, 最新更新版) 
「ビタミンBを皮下輸液に混注するのは良くないアイデア。注射時に痛みを引き起こし(sting)、無菌性が損なわれ、温めで効果が失われる可能性がある。」
 
IRIS Treatment Recommendations for CKD in Cats and Dogs(International Renal Interest Society, 最新版) 
「皮下輸液は脱水補正に有効だが、添加物に関する言及はなく、純粋な水分・電解質補給を基本とする。薬剤は別途投与が標準。」
 
ISFM Consensus Guidelines on the Diagnosis and Management of Feline Chronic Kidney Disease(International Society of Feline Medicine, 2016) 
「皮下輸液はCKDの脱水管理に推奨されるが、添加物に関する詳細なし。証拠ベースの別投与を重視。」


 


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