ふじみ野市
大井みどり動物病院

2026/01/20

リアルフード

自然に近い食事
 
 
 
 
 

 

埼玉県ふじみ野市の大井みどり動物病院です。
 
 
米国政府の公式サイト realfood.gov(2025–2030 Dietary Guidelines for Americans)が示す人の食事の考え方は、とてもシンプルです。
 
「できるだけ加工していない、自然に近い食品(リアルフード)を食べよう」というものです。これは、カロリーや栄養素の数値だけでなく、食品の加工度そのものを健康の指標とする姿勢です。この視点は、近年の栄養学研究でも重視されています。
 
同じ考え方は、犬や猫の食事にも参考になる可能性があります。猫は言うまでもなく、犬と狼は生物学的に同一種(Canis lupus)であり、長い歴史の中で獲物中心の食事に適応してきました。しかし、現在多くの犬猫は高度に加工されたドライフードを主食としており、日本ではこの状態が数十年続き、今や「新しい普通」となっています。
 
人間の栄養学では、超加工食品の長期摂取が慢性疾患リスクと関連する可能性が多数報告されています。
 
犬猫への影響についてはまだ十分に検証されていませんが、DogRisk研究(2023年の大規模飼い主調査)では、子犬期・青年期に超加工炭水化物ベースのドライフードを多く与えていた犬で、成人期の慢性腸疾患(CE)の報告率が有意に高く関連していたことが示されました。
 
一方、非加工肉ベースの食事(生肉、内臓、魚、卵、骨、野菜、ベリーなど)を多く与えていた犬では、CEの報告率が低い関連が観察されています。
 
ただし、この研究は観察研究であり、因果関係を証明するものではなく、逆因果や選択バイアスなどの影響を排除できていません。また、高熱加工で生じる先進糖化最終産物(AGEs)の蓄積が犬猫の炎症に関連する可能性については、一部の研究で示唆されている段階です。
 
一方、市販ペットフードは必須栄養素の欠乏を防ぐ重要な役割を果たし、安全性・保存性・利便性で多くの飼い主を支えています。「ペットフードは悪い」と決めつけることも、「自然な食事なら必ず良い」と盲信することも避けるべきです。
 
日本ではほとんどの犬猫が市販ペットフードを主食としており、自然食中心の犬猫と比較するデータがほとんどありません。そのため、仮にペットフードが慢性疾患の増加に関与していたとしても、それが「加齢のせい」と見過ごされやすい状況があります。
 
人間社会でも、超加工食品が当たり前になった環境では、不健康な状態が「新しい普通」として受け入れられやすいという指摘があります。この構造は犬猫にも当てはまる可能性があります。
 
日本の獣医学、特に栄養学の分野では、「加工食品を一生与え続ける生理的意味」や「肉食動物にとって炭水化物の位置づけ」について、より多くの科学的データと議論が必要です。人間の栄養学で「食品の質・加工度・調理法に注目すべき」という流れが強まっているように、犬猫の栄養学にも同じ視点が求められているのではないでしょうか。
 
Dog Aging Project(2025)の調査では、飼い主提出の自家製犬用食事レシピの94%が必須栄養素を満たさず、潜在的に不完全であることが示されました。
 
注意が必要なのが、AAFCO基準に無理やり合わせようとすると、かえって不自然な食事になるリスクがあることです。そもそもAAFCOの基準は大きな加工を加えてあるペットフード用に作成されたものです。
 
犬猫にとっての「リアルフード」とは、さまざまな獲物の筋肉・内臓・骨を中心とした自然な食材だと考えられます。これは肉食動物としての生物学的原則に基づくものです。この原則が現在の獣医栄養学であまり強調されていないのは、興味深い事実です。
 
便利さや経済性と引き換えに、本来の健康基準を見失っているのではないか、という疑問が残ります。まだ未熟で、考える余地の大きい分野です。
 
犬猫にとっての本当のリアルフードは、動物性の自然な食材にある可能性が高いと考えられますが、それが最善であるかどうかは、今後のさらなる研究で明らかになるでしょう。少なくとも、ペットフードはリアルフードではないと言えるでしょう。


 


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