ふじみ野市
大井みどり動物病院

2026/01/30

ルイス博士の記事を読んで

ヒルズ社への意見
 
 
 
 
 

 

埼玉県ふじみ野市の大井みどり動物病院です。
 
ヒルズ社の公式サイト、ルイス博士の「犬は肉食動物か、それとも雑食動物か」は、一見科学的に妥当な内容に見えますが、詳細に検討すると、誤解を招きやすい表現や比較が含まれています。
 
まず、「雑食動物」という言葉の定義が問題です。犬は基本的には肉食寄りの動物であり、環境に応じて植物性食物も利用できるため、より正確には「通性肉食動物(facultative carnivore)」あるいは「肉食寄りの雑食動物」と位置づけるのが現在の獣医栄養学・進化学のコンセンサスに近いです。
 
また「雑食動物」という単語だけでは、犬の消化管構造や代謝特性を十分に伝えられません。近年の研究では、肉食/雑食の二分法ではなく、摂食割合や消化生理に基づく連続的な食性評価が重視されています。
 
犬の消化管構造を見ると、小腸は消化管全体の約20〜25%程度で、猫(約15%)よりは長いものの、典型的な雑食動物であるヒトやブタ(50%以上)とは明らかに異なります。ヒルズはこの23%という数値を挙げて「他の雑食動物と一致している」としていますが、比較対象としてヒトやブタではなく主に猫を基準にしている点は、犬の雑食性を強調しようという意図があるのかもしれません。
 
猫と犬を比較して犬の雑食性を主張するのは、獣医栄養学ではよく用いられる手法です。しかし、哺乳類全体の比較解剖学的視点で見れば、犬と猫の消化管構造は近似しており、食性も肉食寄りである点で共通しています。
 
比較対象を犬と猫に限定するのは、必ずしも不自然ではありませんが、より広範な動物群との比較が欠けていると指摘されることがあります。
 
また、「犬は炭水化物をほぼ100%消化できる」という記述は、加熱・糊化されたデンプンに対する実験結果に基づくものであり、生の植物性炭水化物や高繊維質の食材にまで一般化できるわけではありません。
 
加工食品での消化効率を、犬の進化的特性のように記述するのは、厳密には正確とは言えません。自然界では、犬(および祖先のオオカミ)が植物から安定したエネルギーを得る機会は限定的です。多くの植物は加熱しなければ有効なカロリー源になりにくく、野生の果実も現代の品種改良された高糖度果実とは異なり、主要なエネルギー源にはまったくなりません。
 
さらに、オオカミ、コヨーテ、ジャイアントパンダの例を挙げて「食肉目=必ずしも肉食ではない」と補強している点も注意が必要です。食肉目は系統分類であり、現在の食性を直接規定するものではありません。
 
ジャイアントパンダは肉食動物型の消化管を維持したまま竹を主食とする極端な適応例で、生理的負荷が大きいことが知られています。
 
オオカミやコヨーテも飢餓時などに植物を摂取しますが、肉が利用可能な状況ではそれを優先し、植物を効率的にエネルギー源とする典型的な雑食動物とは異なります。
 
ヒルズ社は最終的に「犬は雑食動物であり、動物性食品と植物性食品の両方を食べて健康でいられる」と結論づけていますが、これは「生存可能である」という事実を、「生理的に最適である」かのように受け取られやすい表現です。
 
植物性原料を含む食事で犬が生き延びられることと、それが長期的に最も適した食性であることは、明確に区別すべきです。
 
総じて、ヒルズ社の説明はマーケティングの観点からは有効ですが、進化生物学・比較解剖学・生理学の観点から見ると、必ずしも最も正確・包括的なものとは言えません。
 
ペットフード業界では、科学的に最も厳密な説明よりも、法的に問題ない範囲で商品に有利な解釈を採用することが一般的です。
 
そして、とにかく安価な植物性原料を、高度な加工技術と付加価値な商品に変換し続けるシステムを維持したいというのが本音でしょう。
 
ヒルズ社「犬は何科の動物か、肉食か雑食か」という問いに科学的に答えるなら、犬はイヌ科(Canidae)の動物であり、食性は「通性肉食動物(=肉食寄りの雑食)」です。
 
なお、誤植かもしれませんが、ヒルズ社が文中で述べている「肉食科」という分類上の科は存在しません。
 
 
 
参考サイト
 
Hill’s Pet Nutrition.
「犬は何科の動物?肉食?雑食?」
行動と外見
執筆: カレン・ルイス博士
2015年9月20日

https://www.hills.co.jp/dog-care/behavior-appearance/are-dogs-carnivores-or-omnivores?lightboxfired=true
犬は食肉目イヌ科に分類されますが、雑食的な食性を持ち、肉だけでなく骨や植物も摂取します。そのため、犬には肉食動物とは異なる栄養・行動・身体的特徴が見られます。詳しくみていきましょう。
犬は肉食科に属する雑食動物
まずはじめに、犬のように肉食科に属する動物が必ずしも肉食とは限りません。狼、コヨーテ、ジャイアントパンダなど、雑食的な食性が見られることがあります。
狼は草食動物を襲いますが、最初に食べる部分の一つが、それらの動物の胃の内容物や内臓です。
コヨーテは、小型哺乳類、両生類、鳥類、果物、草食動物の排泄物など、様々なものを食べています。
ジャイアントパンダも食肉目に属していますが、実際には笹の葉を主食とする草食動物です。
犬がもっていそうな、植物でも動物でも食べ物は何でも食べたい!という自然な欲求のイメージを表わすには、「食べられるものは何でも食べる雑食動物」という言葉がピッタリかもしれません。
犬(雑食)と猫(真正肉食)の食性の違い
猫は真性肉食動物で、動物性のタンパク質から特定の栄養素(タウリン、アラキドン酸、ナイアシン、ピリドキシン、ビタミンAなど)を摂取する必要があります。これらの栄養素は植物性の食材からはほとんど摂取できません。そのため、猫は肉を主食とする必要があります。
一方、犬などの雑食動物は、これらの栄養素を植物性の食材からも摂取できるか、体内で合成することができます。例えば、犬はアラキドン酸を植物油から合成することができます。
犬に見られる雑食動物としての特徴
このほかにも、雑食動物と肉食動物を分ける栄養・行動・身体的要因があります。
犬には、骨や植物の繊維を噛み潰すのに適した表面がやや平たい歯(大臼歯)があります。
犬は、摂取した炭水化物をほぼ100%消化できます。
犬の小腸は消化管全体の約23%を占め、それは他の雑食動物と一致しています。それに対し、猫の小腸は消化管全体の15%しかありません。
犬は、植物に含まれるベータカロテンからビタミンAをつくることができます。
犬は食肉目に分類されるから肉食動物だと誤った判断をする人がいます。けれども、犬の身体構造や行動、食の嗜好性を注意深く観察すると、実際には犬は雑食性で、動物性食品と植物性食品の両方を食べて健康でいられることがわかるでしょう。
執筆: カレン・ルイス博士
(サイト参照日 2026年1月29日)


 


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