2025/10/09
口の中のメラノーマ疑いをどうするか3

埼玉県ふじみ野市の大井みどり動物病院です。
このポメラニアンさんは先日、天寿を全うしました。>>>
ご家族と一緒に穏やかな最期を迎えることができたようで、先日ご挨拶にいらっしゃいました。
定期的に受診していましたが、口にあったメラノーマが疑われるしこりは死因ではなかったと考えています。なぜなら、そのしこりは小さくなっていたからです。
おそらく、仮にこれが固形がんの一種であるメラノーマだったとしても、悪性度が低く、転移による臓器不全を引き起こさないタイプだったと推測されます。
穏やかに天寿を迎えることが目標でしたので、それは達成できたと考えています。仮にメラノーマが死因だったとしても、苦痛の少ないがん死だったと思われます。
結果的に、しこりに対して積極的な検査や治療を行わなかったことは、かなり良い選択になったと考えています。顎の骨を切除するような手術は、確実に生活の質を下げていたでしょうし、手術によってがんが進行し、寿命が短くなる可能性もありました。
ただし、逆にしこりが大きくなり、痛みや摂食困難を引き起こす可能性もあったため、経過観察が常に最善とは限りませんので、たまたま運がよかったのかもしれません。
痛みや出血がある場合、手術によって生活の質が改善する可能性はありますが、切除範囲が大きいほど顎の機能障害が確実に生じます。また、メラノーマは転移が早いことが知られており、しこりが目に見える時点で転移する性質のものであれば、すでに転移が起こっている可能性が高く、手術で転移を防いだり延命したりすることはやはり不可能ではないかと考えられます。
臨床経験からすると、転移死するがんは非常に急速に進行します。体調不良の犬や猫を検査した際に、すでにがんの末期であることが判明するケースは珍しくありません。一方で、しこりを経過観察することはよくありますが、経過観察中に転移が判明し、転移が原因で亡くなるケースはほとんど経験していません。
がんは老化現象の一つと捉える考え方もあり、がん自体は珍しくありませんが、激しい転移を引き起こすがんはかなり少ないと考えています。人間でも高齢になると潜在的にがんを患っていることは一般的です。このような治療意義の低いがんを見つけてしまい治療することで、さまざまな副作用が生じている可能性もあります。
動物病院では、犬や猫でがんが見つかることは日常的ですが、それに比べそのがんが死因になるケースは多くありません。一方で、一般的にはあまり知られていないことですが、がんの治療による死亡や、積極的な治療によって穏やかな最期を迎えることが難しくなるケースも経験します。
おそらく例外はありますが、元気で食欲もある犬や猫にしこりが見つかった場合、そのほとんどは転移しないものであり、転移によって命を脅かすような腫瘍はしこりの発生に対し非常に少ないと考えています。
また、しこりが転移する性質のものであれば、しこりが認識できる大きさになった時にはすでに転移が起こっている可能性が高く、治療で転移を制御することは非常に困難です。治療の効果と副作用を考慮すると、経過観察が最も無難な選択肢である場合が多いと思います。現代の医学では年々早期にがんが発見できるようになっていますが、それよりずっと前に転移が起きていることがほとんどでしょう。
簡単に言えば、固形がんが疑われるしこりで特に症状がない場合、リスクとベネフィットを考慮すると、経過観察が期待値の高い合理的な選択肢になると考えています。
続く
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